彰人、4・26墨田区でのKO-D無差別級挑戦に向け「DDTのリング上でのトップの景色を見たことないんで、そうありたい」
CyberFight副社長の彰人が『DDT×ジークスター東京 特別興行「DDZT」』(4月26日、東京・ひがしんアリーナ=墨田区総合体育館)で、上野勇希の持つKO-D無差別級王座に挑戦する。ここ数年、選手としては第一線を退き、副社長業務に力を入れていた彰人だが、王者・上野の指名により、同王座に挑む。大一番を目前に控えた彰人に現在の胸中を聞いた。
――副社長としては、具体的にどういった業務をこなされているんでしょうか?
「DDT事業部の大会予算とか経営面、数字面。おもに見てるのは商品事業部の統括です。たとえばTシャツ開発、ポートレート、インターネットサイン会、通販事業部とかをすべて統括して見ています。方向性とか。今月あれやってとか、これやってとかを僕が決めて動かしています」
――ご多忙だと思いますが、選手として支障はありませんか?
「2020年に副社長になって、なったすぐ後くらいはスケジュール的には大丈夫なんですが、メンタルのバランスを取るのが難しかったですね。今は慣れて、それはそれ、これはこれでやってます。むしろ同時並行でやってるというか。裏に戻ったら、副社長の業務に戻ってやってます。そんなに大変じゃないというか慣れました。基本、平日は朝10時に出社して、打ち合わせとか業務をこなして、早く終わっても夕方6時くらい。遅かったら、夜8時くらいまでかかって。そこから道場に行って個人の練習したりとか、ジムに行って。すべて終わるのが12時すぎるくらいな感じで動いてます」
――慣れたと言ってもかなりハードですね…
「ルーティーンです。全部言うなれば仕事なんで。トレーニングも趣味でやってるわけじゃなくて、レスラーとしての仕事の部分でやってる。僕は一番DDTのことを考えて動いてるんで、DDTのために人生かけてると言ったら僕で…」
――2年くらい前まではEXTREME王座に絡んだりなどありました。最近はフェロモンズ討伐とかバラエティ枠での試合が多く、選手として納得していましたか?
「それでいいと思ってました。自分が選手としての欲でベルトどうのこうのとか、自分に今求められている立ち位置を理解するようにしていて。副社長としてもそうだし、どちらかと言えば、僕のマインドとして『DDTがよくなればそれでいい』と思ってたから、一選手・彰人として恵まれなかったとしても、DDTが上がっていくのであればそれでいいと思ってた。だから僕がタイトルマッチに絡むことがDDTにいいことなら、それをするし。フェロモンズ討伐をすることが次につながっていいことなら、それをするし。フェロモンズに関しては社長に言われたことをしただけです」
――選手としての欲より、DDTへの愛が上回っているわけですね?
「僕のプロレスキャリアをDDTにすべてかけてるんで。だからこそ選手としてじゃなくて、DDTに。武藤(敬司)さんの引退興行を東京ドームでやって、DDTの選手たちがそこに立った。もちろん喜びもあったけど、そこに選手として立てなかった悔しさは全くなくて。じゃなくてDDTでドームをやれてない悔しさしかなかった。やりたいという風にもなったし。だから、ほかの選手とは気持ちのベクトルが違うというか、一レスラーとして成功を願うんじゃなくて、DDTの成功を願う、DDTのレスラー彰人として成功を願う、よっぽどマインドが違うんじゃないかと…」
――3・17後楽園で勝利者賞を渡して、上野選手から挑戦者として指名を受けたんですが、何を言ってるんだ?という感じでしたか?
「最近、勝利者賞とか高木さんの代わりに渡すようになって、僕がリングに上がって渡そうと思ったら、マイクをオフにした状態で『次彰人さん指名しますからね』と言われて。彼がいつも冗談でそういうことを言ったりするんです。バックステージとかで。まだやれるじゃないですかとか。その一環だと思って。いやいや俺じゃないでしょうって。ほかにいるし、今じゃないでしょうって。リングで苦笑いしてたんですけど、『本部席で待っててください』と言われて、渋々リングに行ったら、ああやってマイクで指名されて。そんな感じでした」
――挑戦者には、自分よりふさわしい人がいるんじゃないの?という気持ちが強かったですか?
「語弊があるかもしれないけど、自分よりふさわしい人と言うか、お客さんとかに自分がプレイヤーとして、そこを目指すことを求められてないように思ってたし、そこ挑戦する代わりはいくらでもいる。でも副社長としての代わりはいないと思ってて。ただ無差別に挑戦したい人はいくらでもいるし、挑戦できるし、だから僕じゃないでしょって思ってたんですよ。僕がそこを担う必要ないし、僕がそこに立たなくても盛り上がってよくなると思ってたので」
――上野選手の防衛ロードを振り返ると、男色ディーノ選手を指名して、HARASHIMA選手は向こうからの表明でしたが、DDTの歴史を作ってきた人たちの挑戦を受けてる流れがあって。彰人選手にも『まだまだできるでしょ』というところから来てると思われるんですけど、その辺は理解されてましたか?
「たぶん上野君は、まだまだ彰人さんやれるでしょという感覚じゃないと思うんです。あの指名って。どっちかって言うと、何で全然できるコンディション、ポテンシャル保ってるのに挑戦してこないの?のほうだと思うんです。ケツ叩くというより、どっちかと言うと?のほうが強い。彼がリング上でなぜ挑戦してきてほしいかっていうことを語った時、あなたがDDTの選手として挑戦してきてくれることで、DDTがよりよくなると言われた時に、それが今求められてることなら、それを全力でやりましょうと。という感じで受けたというか、と思ったというか。無差別のチャンピオンが今の団体の主役、トレンドと思ってて、そのトレンドレスラーが今のDDTがよくなる最善がこのタイミングで“あなた”だと言うなら、じゃあやりましょう。その代わり手は抜かないですよという感じでした」
――無差別に挑戦することになって、生活ぶりに変化はありましたか?
「正直いつもと変わらないです。僕は副社長になって決めてることがあって、自分の背中を見てついてこなきゃいけない人たちがいると思ってる。高木(三四郎)さんの背中を見て、僕はついてきたし、ほかの選手も。高木さんの一つ下の席に座ることになったんです。ということは選手たちは自ずと僕の背中を見るんです。それは裏方としての自分とか、プライベートの僕もそうだし、選手としての僕の背中も見て引っ張っていかないと思った時、一番イヤだったのは副社長になったら、めちゃくちゃ忙しくなるんですよ。それで練習ができないとかコンディションが悪くなったとか、試合のレベルとが落ちたとか言われるのが一番イヤでなめられたら困る。お客さんじゃなく、下の子たちになめられたら困ると思って、練習だけは忙しくても手を抜かないようにしてたし。なんなら副社長になる前よりやるようになったんです。なめられたくないから。自分がアクション起こさなかっただけで、明日、なんなら今日やってって言われても、100%お客さんの納得いくパフォーマンスができると思って。なんなら勝つことができるコンディションを常に保ってたはずなんです。だから特に大きく変わるとかないです」
――無差別への挑戦は、竹下幸之介(KONOSUKE TAKESHITA)選手が王者時代の2017年4月に「いつでもどこでも挑戦権」を行使したのが最後です。「いつどこ」を使った挑戦は、通常の挑戦とは違いますか?
「違います。この時の『いつどこ』での挑戦は、無差別を獲りたいというより、どちらかと言うと天才・竹下幸之介とシングルしたことがなかったので、竹下とシングルしたい、リングで会話したいと思っての挑戦だったので。そこにたまたま無差別に挑戦できる理由付けがあって。だから、ホントに無差別獲ろうと思って挑戦したのは2014年4月、KUDOさんに挑戦したのが最後ですね」
――タイミングの問題もあったでしょうが、それ以降、自分から無差別挑戦に行こうと思ったことはなかったですか?
「1回もないですね。自分から行こうと思ったのは、その挑戦が最後で、挑戦者決定戦とかにも1回も出てないはずなんで」
――無差別より、EXTREMEで自分の価値観を光らせたい思いが強かったですか?
「僕はEXTREMEがすごい好きで。理由はいくつかあって、そもそも男色ディーノというレスラーに憧れてDDTに入って。その男色さんから初めて勝って、初めて獲ったベルトがEXTREMEだったというのもあるし。やはりEXTREMEってDDTならではのベルトだった。自分でルール決めて、自分で方向性決められるベルトって、なかなか他団体ではなくて。他団体の一番を決めるベルトはいくつもある。各団体に一個ある。それってらしさでも何でもないと思ってて。DDTならではのベルトは僕のなかではEXTREMEで、EXTREMEは制限されることなく、自分の表現をできるベルト。無差別はチャンピオンになることで、一番格上のベルトだから、自分の表現を制限されるタイミングってあるんですよ。だからあまりそこに魅力を感じてなくて。らしさを出せるベルトにこだわってて、EXTREMEに愛情を持ってたんです」
――今回は相手の希望で無差別に挑むことになったんですが、実質10年ぶりの挑戦というのはどんな感じですか?
「正直無差別に一生挑戦することはないと思ってたんで、こういうタイミングがない限りは、このタイミングで挑戦することになるんだ、回ってくるんだ、こんなのがって正直思いました。僕には一生縁がないと思ってたのに、来るんだって感じですね。ただそこに気負いとか全くなくて、今UNIVERSALとか別のベルトも増えてますけど、EXTREMEに挑戦する時と気持ちは変わらないですよ。昔はもう少し気負ってたと思うんですけど、僕はEXTREMEが無差別に並ぶ象徴するオンリーワンのベルトと思ってるんで。それに挑戦する時と同じ心持ちというか、無差別だからって気負うことはないです」
――3回前哨戦があって、勝ち負けはともかく、“削り合い”という発言がありました。タイトル戦で勝つために削らないといけないですか?
「ホントにそうだと思ってて。お客さんから見た前哨戦は期待値を高めるというか、よりタイトル戦に向けて気持ちを入れられる、感情を上げられるための前哨戦、楽しむための前哨戦と思ってる。選手としては、前哨戦見た時に、気持ちを盛り上げていくとかじゃない。むしろそんなこと言って前哨戦に臨んでるヤツ、正直クソ食らえと思ってて。そうじゃないじゃんって。挑戦するって決まった時点で、気持ち高まってるんだから。まだそこで高まってない状態で前哨戦してるって、ホントに挑戦する気あるの?という話になってくるし。お互いどんな引き出しがあったとか、相手にいかにダメージ与えて自分がタイトル戦で勝てるように運ぶんだとか、そういう駆け引きだと思ってる。体だけでなくメンタルもそうだし、心と体の両方の削り合いだと思ってる。もちろんお客さんに見せる分には、パフォーマンスとして素晴らしい前哨戦を見せなきゃいけないけど、一選手としての戦いとしてはそうじゃないでしょ、前哨戦ってと思うんです。格闘技に前哨戦あるかってないわけで。プロレスならではのものだと思ってて。そこでどう前哨戦を戦うかということを、チャンピオンの上野君はもっと考えた方がいいよって。と思って戦ってたのはあります」
――上野選手の足にマトを絞ってダメージ与えました。その意味で前哨戦の意味はありましたか?
「足はもちろん攻めますけど、よっぽど深手を負わない限り、1週間後に残るダメージってなかなかない。何が大事かって、前哨戦でメンタル揺さぶるのが大事かって思ってた部分があるんで。割と上野君の今までの防衛ロードを見てると、相手と対等、もしくは上野君の手玉に取られてることが多い。彼の思う前哨戦をやってたと思ってて。だけど、僕はそれをさせてないと思ってて。その時点で前哨戦の点では、優位なのかなと思ってます」
――心理戦を仕掛けて、彰人選手に有利という手応えはありましたか?
「まだ彼は自分らしさを保とうというか、タイトルマッチだけじゃなく前哨戦も、彼はまだ僕が殻を破ってないというかもしれないけど、逆だと思ってて。上野君がもっと出したことない上野勇希を出してきなよと思ってて。まだあなたの心の奥底にあるものがあるでしょって」
――当然ベルトは狙いますよね?
「もちろん。ベルト獲るために戦うわけですから」
――戴冠がなった場合、副社長業務をやりながらになりますが問題はないですか?
「もちろん。高木さんは社長やりながらベルト持ってたこともあるし、丸藤(正道)さんだって副社長やりながらベルト持ってたことだってあるだろうから。プレッシャーに思うこともないし、むしろ上野君が言う、それでDDTが面白くなるなら、それでいいじゃんと思います」
――ベルトを獲ったら、チャンピオンとしてDDTをどういう風に展開したいですか?
「ベルト獲った後のプランは獲ってから考えたい。というのはその時のお客さんの温度感を大事にしたいというか、獲る前からこういうプランで行こうとかあまり考えたくなくて。獲ってみないとお客さん、周りの温度感がわからなくて。獲って、そこで肌で感じたことで動いていこうかなと思ってます。リング上で挑戦者への指名を受けるまで、僕が第一線でやってるイメージができない人のほうが多かったと思う。正直僕が指名された時、えーって声が挙がってたから。まずは彰人って、こういうレスラーなんだよというのを、しっかり今のお客さんに示さないといけないと思ってるし、僕は副社長でって立場でリングに上がることも多かったので、自分が持ってる本来の色とか、本来の毒を消してリングに上がることも少なからず多かったので。そういうのを全開放した状態を見てほしいと思ってます。ただ今もDDT好きだけど、入る前、自分が見てた自分が面白いと思ってた時代のDDTのチャンピオンになりたいと思ってます」
――具体的には?
「僕が見てた頃は、まだ飯伏(幸太)さんもいたし、若手で入った頃ではKUDOさんとか、HARASHIMAさんとか活躍してて、坂口(征夫)さんが入る前ですよ。高木さんが前線にいたりとか、(ディック)東郷さん、MIKAMIさんがいたりとか。あの頃の完成されてない部分もあって、ただ“らしさ”があって。DDTらしさをもっと増やしていければと思います。そこが薄まってた時期もあるんで。今のチャンピオンの上野君と考えが似てるとこもあって、DDTらしさ、DDTの良さをもっと出していこうというが僕のテーマでもあります。自分もそこに立って、もっともっと下の子を引っ張って。特に若い子とかに、若手だからとかくすぶってるんじゃなくて。言うのは自由だし、行動に移すのは自由だから、もっともっと自由で楽しいことしようよって。見せていこうよと思います」
――4・26墨田大会の直後には「KING OF DDT」トーナメントが始まります。ベルトを獲った場合、優勝者が挑戦表明してくるかもしれませんが意識はありますか?
「そこにエントリ―してる人たちも、全員わかるし、逆にいいタイミングだなと思ってて。20周年記念大会、そこに第1回覇者のポイズン澤田JULIEさんがいて、歴代のDDTの色を作ってきた人たちが参戦してて。その時代を象徴する人がそこにいて、勝ち上がった人が20年の歴史の覇者になるんで、その時のザ・DDTになるんですよ。その人とやれるのはデカいなと。いいんじゃないかと思ってます」
――その先には両国国技館(7月21日)が控えていますが、チャンピオンで上がりたいですか?
「最近常々思ってるのは高木さんが大社長でやってて。高木さんは最近できたUNIVERSALのベルトはおいといて、DDTのベルトをほぼ獲って。いわゆる選手としてトップとしての景色を見てる。裏方としても。でも世代交代ってリング上だけじゃなく、裏方でもあるわけで、順番でいけば、裏方で言えば僕になるわけで、役職で言ったら。僕が仮に社長になった時、DDTのリング上でのトップの景色を見たことないんですよ。無差別巻いてないんで。トップの景色を見てない人が、社長になるのはどうなのかなと。高木さんはそうだったし、僕もそうなりたいな、そうあればいいなと思ってるんで。そこで無差別巻く意欲というか、意味合いをやっと見いだせたのかなと思ってます。今まで自分のなかで無差別を巻く意味合いを見いだせてなくて、挑戦しなかったけど。上野君と向かい合って、無差別を巻く意味合いをやっと見つけたかなと思います」
<写真提供:DDTプロレス>
【動画】彰人「聖人君主の皮を被ってるプロレスラー上野勇希をずっと演じてる。墨田区、レスラーとしてではなく、彼が生きて来た人生分の上野勇希として対峙してほしい」
🎙4・26ひがしんアリーナ(墨田区総合体育館)大会、KO-D無差別級選手権試合開催‼️
彰人「聖人君主の皮を被ってるプロレスラー上野勇希をずっと演じてる。墨田区、レスラーとしてではなく、彼が生きて来た人生分の上野勇希として対峙してほしい」
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— DDT ProWrestling (@ddtpro) April 20, 2024