【編集長コラム】「追悼 倍賞鉄夫さん」

倍賞鉄夫さんが亡くなった。享年68歳。何とも早すぎる。

新日本プロレス旗揚げ期から支えた、倍賞さん。

倍賞千恵子さん、美津子さんの実弟ということを鼻にかけるでもなく、時に飄々と、時にひょうきんな人だった。

リングアナウンサー時代、大きな蝶ネクタイを愛用し、コール時に手をかざす独特のアクションで人気を集めた。

外国人レスラーに襲撃されることもしばしばだった。

その経験から、花束嬢にアドバイス。危険を回避しながら、しかも、怖がらせずに優しく誘導する術に長けていた。

各団体のマットを経験した当時の花束嬢は「他のリングアナのように『危ない! 早く逃げて!』などと言われると、焦ってしまい、うまくロープをくぐれず、引っかかったりして危ない。でも倍賞さんは『リングから出ようか』と言ってくれるので、あわてず、平常心で降りられるんです。特に着物を着ている時には、動きづらいので助かりました」と振り返る。

また、ちびっこファンには、新日本プロレスの選手、関係者になぞらえ、社会の縮図、経済のしくみを教えていた。

故・山本小鉄さんは「学校はさぼっちゃダメ! 勉強しなさい!」だったが、倍賞さんは柔軟に「学校の勉強も大事だけど、世の中のことも知らないとね」と諭し、故・二階堂進氏との関わりやタバスコ事業のことなど説明していた。

「その時は難しくて、よくわからなかったことも大人になるにつれ、わかって来ました」。すっかりオールドファンになった『昭和のちびっこファン』は口を揃える。

「試合を見せるだけじゃなくて、大人になって役立つことも少しは教えてあげないと」と倍賞さんは話していた。

おしゃれでダンディだった倍賞さん。

「おヒゲの手入れが大変じゃないですか?」と問うと「フフフ、男のおしゃれだよ」と穏やかに微笑んだ。

晩年はお体が悪く、辛かったでしょう。

ゆっくり休んで下さい。

きっと天国のプロレス村で、小鉄さんや勘太郎さんたちと、懐かしい「あの頃」の話をするのでしょうね。

楽しい話は尽きないことでしょう。

謹んでご冥福をお祈りします。合掌。

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