政岡泰志の【ホゲーッ!昭和プロレス愛宣言】第2回
政岡泰志の『ホゲーッ!昭和プロレス愛宣言』第2回
鉄鍋の中には高温で熱された大量の小石。いわゆる小石炒飯です。そこに素早く正拳を繰り出す!熱さを感じないほどに素早く!バイブル「プロレススーパースター列伝」で描かれたブッチャーの特訓シーンです。必殺地獄突きが誕生した。
真偽はともかく、凄まじく、面白い。実は自分とこの劇団 動物電気でも小石炒飯を登場させました。もちろん誰も熱さを感じないほどのスピードで正拳を繰り出すことは出来ずグダグダのシーンになりました。しかし、真似したくなる、プロレスのあれこれ。宝庫と言ってよいでしょう。カブキさんの毒霧とか全国の少年が真似したに違いない。うちの田舎では小麦粉をティッシュにくるんで吹き付けてました。液体だと洗濯が大変だったからでしょうか。
維新軍の長州力とアニマル浜口がやってた太鼓の乱れ打ちも小学生の自分はよく真似してました。あれはやられると屈辱的なのです。背中を太鼓に見立て連打されるわけですが、痛いのと、あと、目線が地面に向いてる時に攻撃されるのは生物として不安になる!全国のどこかにはジャーマンスープレックスなんかを繰り出す小学生もいたのではないか。もちろん危険なので絶対にダメなのだけれど。地味にクロスチョップが痛かったなあ。首の肉を挟むようにクロスチョップする同級生が、おった。
そして当たり前だけど大人になるとプロレスごっこはしなくなりました。たまに劇団の稽古の合間に童心に帰って技をかけてみようとしたことありますが、臭いが、密着すると大人は臭いが、臭いが、ダメでプロレスごっこは無理だ。だいたい、密着が難しい、大人同士は。それでもプロレスへの憧れを未だすてきれず飲食でレスラーの真似をしたりします。アンドレの実録漫画でビールを瓶でそのまま飲んでいるのが豪快だったので真似したなあ。もちろん一回だけ。アンドレの真似続けてたら内臓爆発してしまう!旨かったけど瓶ごとビール。
ああ、それにしても、小石炒飯は安易だったなあ!「焼けた石に手を突っ込むんだよウへへへへ」と安易に人前でやってしまった。ストーリーに関係なく唐突に。いま考えれば、無人島に漂流して食糧がなくどうしても中華料理が食べたくて海辺の小石を炒めて食べようとして云々かんぬん、とかだったら成立したかなあ、しないか!でも、やはり動機づけは、明確な動機づけは必要なのです。お芝居は面倒くさい。その点、プロレスラーの皆さんは肉体がご自身の肉体が説得力だし、リングが動機でしよう。やはり、永遠の憧れです!