【編集長コラム】「令和の王道マットは ますます熱い」
平成最後の全日本プロレス「チャンピオンカーニバル」(CC)は、3冠王者・宮原健斗の18年ぶり史上7人目の「3冠王者のCC制覇」という快挙で終わった。
「春の祭典」CCは「暮れの風物詩」最強タッグリーグ決定戦と共に、マット界に定着している。
全日本プロレス支持者が「チャンカー」と称するのに対し、新日本プロレスのファンは「チャンカン」と呼ぶことが多いという。故ジャイアント馬場さんが「チャンカー」とし、猪木が「チャンカン」としていたからだというが、諸説ある。
いずれにせよ、ファン同様レスラーたちもCCには特別な思いがあるのは間違いない。例年、過酷なサバイバルレースとなるが、今回も混戦に次ぐ混戦だった。
そんな中、野村直矢の健闘が光った。気合いの入った鬼気迫る表情、髪を振り乱し「ライオン丸」のような形相で、胸を突き出し、相手の技を正面から受ける堂々とした真っ向勝負に、ファンの声援が集まった。開幕戦でのジェイク・リー撃破、そして諏訪魔超え。「こんな日が来るとは…」と、諏訪魔に言わしめたほどの大活躍だった。
Bブロックの1位決定戦で惜しくもジェイクに敗れ、決勝戦進出はならなかったが、3月の3冠挑戦時の勢いが止まらず、今後の大暴れにますます期待が高まっている。
決勝戦で宮原に敗れ準優勝に終わったジェイクも、いつもの冷静さ、優しさを封印し、覚醒したような荒々しいファイトが爆発。その背中には、蒼い炎が見えた。今後さらにキャリアを積み、老獪さを身につければ3冠王座にも手が届くだろう。
「悔しい結果も次、どう活かすか。人生、死ぬまで勉強です」という向上心も素晴らしい。ジェイクの今までのレスラーにはない上品でクールな雰囲気は、新時代「令和」で大きく花開くはず。
野村もジェイクも体格も良く、ハートもいい。もう少し、あともう少し。彼らの時代はすぐそこだ。
初出場の青柳優馬は、ゼウスや崔領二に勝利するなど、期待を上回る大活躍。ただ、今後の課題もはっきりした。スーパーヘビー級戦士を向こうに回した時のスタミナ配分、パワー負けした時の対策、試合運び…四天王プロレスのような正面からのぶつかり合いを好む王道ファンの声援を勝ち取るためには、まだまだ多くの課題があることを、青柳本人が再認識したことだろう。
「令和のエース」を宣言した宮原だが、好敵手があってこそ光るもの。野村、ジェイク、青柳の3人との「令和の名勝負数え歌」を期待するファンの声は大きい。
ただ、若い選手の台頭を、世代交代を、黙って許すほど甘い世界ではない。さっそく「全盛期」の石川修司が3冠王者プラスCC覇者の「4冠王」宮原の前に立ちふさがった。もちろん、諏訪魔もこのまま黙ってはいないだろう。
初参戦で変幻自在なファイトスタイルを披露しこれからが楽しみはジョエル・レッドマン、そしてジョー・ドーリングなど強豪外国人選手もいる。
老舗団体という看板に甘んじることなく、どの会場も超満員になるよう、試合はもちろんのこと、個々よりも団体全体を見守る「則天去私」の気持ちで、ファンサービスにも万全を期してほしい。
大型選手の肉弾相打つド迫力の試合は、王道マットならでは。群雄割拠のプロレス戦国時代を生き残る条件は、すべて揃っている。