【編集長コラム】「飯伏幸太に任せた!」
「大人の飯伏幸太」がそこにいた。久しぶりに会ったゴールデン☆スターは、以前の「自由奔放でマイペースな若者」ではなかった。
ファッションも、立ち振る舞いも言葉の選び方も、何から何まで洗練され、大人の男になっていた。
インタビューを終え、駅に向かう途中「お茶しますか?」となった。
辺りを見回した飯伏は「あそこにしましょう」と即断。自ら大手コーヒーチェーンのドアを開けていた。
おしゃれなお店に溶け込んでいる。モンブランもオーダーした。
「あれ、甘いもの、大丈夫?」。鍛え抜かれた体は「節制した食生活」を物語っていただけに、いささか意外だ。
「今日は、練習やりこんだし、甘いものも必要ですから」と明快な答えが返ってきた。しかも、和栗入りの「和風モンブラン」である。
米WWEのオファーを辞退し「日本のプロレスを大きくしたい」という決意が、自然に和風の一品を選択させたのだろうか。
ガバッと一気に食べるのではなく、ひと口ひと口、大事そうに味わって食べている。
洗練された言動に、ファッションモデルかと思わせるおしゃれなファッション感覚。米遠征も一人でこなす内に、自然に身についたに違いない。
英語もヒヤリングに不安はないという。「聞くことはわかります。話すのは身振り手振りを織り交ぜれば大丈夫」と、英会話にも自信をほのめかす。
実際、米国の就労ビザなど、煩雑な手続きも一人でこなした。
「最初はみんなに助けてもらったけど、今は一人のほうが気楽ですね」と、米WWE遠征時の米国生活も楽しんでいる様子。
失礼ながら飯伏が米WWE入りを辞退したのは「アメリカ生活が不安だからだろう」と思っていた。
「プロレス少年が、そのまま大人になったような彼には無理だ」と、自他ともに認めるのが飯伏だと考えていた。
「申し訳ない」と、謝るしかない。飯伏は「大人の男」に変貌している。
自宅でゲームばかりしている内向的なイメージも強かったのだが「外へ出るようになりましたよ!」と、充実した忙しさを楽しんでいる。
フリーになってから、いろいろな人が寄って来たこと。それがいい経験になり、とても勉強になったことなども熱く語ってくれた。
「プロレスの妖精」というか「不思議ちゃん」だった飯伏のイメージは完全に覆った。
しかも「スゴイものを見せたい」「その時、最高のものを」「僕しかできないことを」という言葉が口から自然に流れ出てくる「熱き男」だった。
多くのレスラーをインタビューしてきたが、馬場、猪木、天龍ら日本プロレス史をリードしてきた「ミスタープロレス」たちと対した時と、同じ感覚に襲われる。
しかも驚くほど、顔の色つやが良く、若返ったように見えた。
唇の色も赤く、血色の良さが出ている。「色つきリップつけているの?」と冗談で聞いたら
「あはは、つけていませんよ! 顔色いいですか? 体調がいいですからね」と、屈託なく笑った。
今がベストコンディション「250%だ」と断言する飯伏の表情は、自信に満ち溢れ、頼もしさを感じさせた。
日本プロレス界を背負って立つ気概にあふれた飯伏。「彼ならやってくれる」と思わせるオーラを、いつの間にかまとっていた。
「2017年のプロレス」を飯伏幸太に任せたい。