天龍源一郎との宴席はまずスーパードライ

プロレス観戦後の酒はうまい。

 

興奮冷めやらぬまま「試合がどうの」「マイクがどうだった」など、ああだこうだと言いながら飲む酒は格別だ。

 

天龍とは、数えきれないほど、酒席を共にした。いつもいつも豪快な酒だった。

 

「アイスペールに色んな酒を入れて飲む」というウワサは本当だが、天龍はスーパードライが好きだ。

 

もちろん、日本酒、ウイスキー何でもござれの酒豪だが、ビールはスーパードライなのだ。

 

アサヒのスーパードライが発売されたのは、1987年。天龍同盟が結成されたのも同年。

 

最初は、故・阿修羅原さんが気に入って勧めていた。

 

「これ、新しく発売されたビールなんだ。うまいんだよ! 飲んでみなよ!」とそれはそれはお気に入りだった。

 

正直、それまで私はビールの苦味があまり好きではなかった。

 

だが、スーパードライを飲んで、そのシャープな辛口のキレに驚いた。感動したと言ってもいい。

 

「わ~、うまいですねぇ!」

 

それ以来、天龍同盟の宴席に、スーパードライが欠かせなくなった。置いてあるか、お店選びの最優先事項となった。

 

天龍同盟はスーパードライLOVEだった。

 

天龍と私

 

レスラーの中でもスーパードライ好きは多い。

 

試合や練習で汗をかいた後には「格別にうまい」という。

 

NWAのブルース・サープ社長も、大のスーパードライ好き。

 

日本に来る楽しみのひとつで「スーパードライしか飲まないから!」とキッパリ宣言するほどだ。

 

引退試合を終えた天龍は、バックステージでスーパードライを飲んだ。

 

「う~ん、うまい! キレがあるね」と、何とも満足そうな表情を浮かべた。

 

引退試合を無事に終えた安ど感、達成感そして、天龍同盟の頃の思い出が走馬灯のように駆け巡っていたのではないだろうか。

 

私もその日の晩酌は、もちろんスーパードライを飲んだ。

 

天龍同盟を取材していた頃の思い出が、浮かんでは消えた。

 

目の前に、波々とついだもうひとつのグラスを置いた。

 

それは今は亡き、阿修羅原さんへの献杯だ。

 

「原さん、今日、天龍さんが引退したよ」と、心の中で話かけながら飲んだ。

 

原さんはきっと、星の窓を開けて、見守っていたはず。

 

この先も、スーパードライを飲む度、天龍同盟、そして素晴らしかったこの日の引退興行のことを思い出すだろう。

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