【編集長コラム】「61分」
大日本プロレスの3・5後楽園ホール決戦。正午試合開始の大会に、超満員札止めの観衆が集結した。
「一騎当千」(今年はデスマッチ部門)の開幕戦ということもあり会場は、試合開始直後から異様な熱気に包まれた。
この日は、イベント企画会社「TABICA(タビカ)」の「プロレス観戦ツアー」第一弾が開催。大日本プロレス協力の元、私がホストとして案内役を務めた。
TABICAは「そばを打ってみよう」「田植えをしてみよう」「落語家と街歩きをしよう」など、多種多様な体験型のツアーがあり、まさに「大人の社会科見学」。
「プロレスを見てみよう」は、初めての試みだった。
試合前には、メインイベントで防衛戦を控えたBJW認定世界ストロングヘビー級王者・関本大介を囲んで歓談。記念写真を撮った参加者は大喜びで、自然と応援にも力が入った。
岡林裕二や浜亮太、佐藤耕平による、ド迫力の肉弾戦。
スーパーヘビーの選手に、果敢に立ち向かう野村卓也の奮闘。
竹田誠志や木髙イサミの過激なデスマッチ等に、聖地・後楽園ホールは興奮のワンダーランド。
大盛り上がりの中、メインイベントに突入した。
王者・関本大介に、鈴木秀樹が初挑戦という注目の大一番。手に汗握る白熱の攻防が続いたが、時間切れ引き分け。
客席からは、二人の緊迫感あふれる攻防に、惜しみない拍手が巻き起こったが、この両雄には30分1本勝負は短すぎたのかも知れない。
昔はしばしば「61分3本勝負」が争われた。藤波辰巳(当時)のタイトルマッチに多かった記憶がある。
1-1のイーブンから、3本目。1分間のインターバル中に、自身のコーナーに戻り汗を拭き、ビール瓶に入った水でうがいをしてバケツに吐き出す。
ダメージを負った場所に氷を当てて冷やしながら、顔を寄せ小声で指示を出すセコンド。
時には、神様・カールゴッチの姿もあった。
その短い時間は、次なる闘いへのエピローグ。逆に、期待が高まった。
この「61分」という半端な時間については、60分勝負で決着がつかず、時間切れ引き分けに終わった選手が悔しがり「あと1分あれば、勝てたのに」と発言。その声を受けて、タイトルマッチの権威づけをするために「61分」にしたという。
誰の発言だったのか、アメリカ人選手という事だが諸説ある。特定されていないという。
「時間無制限」という方法もあるが「61分」という響きは、何ともプロレスファンの琴線に触れるのだろう。
最近、3本勝負はまずお目にかかれない。3本勝負はすっきり決着を望む時代の風に、そぐわないのかも知れない。
関本大介VS鈴木秀樹。3・30後楽園ホール大会での再戦が決まった。
時間を置かずに実現する2度目のタイトルマッチ。お互い負けられない。
3・5決戦に続いて、今年のベストバウト争いに加わる名勝負間違いなしの大一番。どんなファイトになるのか、今から楽しみで仕方ない。
本当は、3本勝負でじっくり見てみたい珠玉のカード。せめて「61分1本勝負」にしてほしいと願うのは私だけではない筈だ。