『プ女子百景』著者・広く。さんインタビュー「プロレス観戦は己との対話」

<プロレスらしくないプロレス技は、かえってプロレス的である>

――『プ女子百景』に至るまでの過程は?

広く。:これ、話すととても長くなるんですけど……流智美さんの技図鑑(『流智美のこれでわかった!プロレス技―上半身編・下半身編』)を、たまたま近所の図書館で借りたことがきっかけです。

――流智美さんは記憶力抜群の人です。プロレスの生き字引。

広く。:プロレスの本って胡散臭いテイストの本が多いじゃないですか。これは端正というかマジメというか、ちゃんとした本だったので、こういう本もあるんだと思いました。技を分かっていた方がプロレスをもっと楽しめるんじゃないかと思って、技に関する本を集めて楽しんでいました。プロレスの漫画でデビューしてアシスタントをしながら、どこかくすぶっていて、アシスタントもうまくいかず辞めたけど、何か自分でもできることがあるんじゃないかと、この本を参考にしてブログを書いて、技を100個更新してみたら何か変わるんじゃないかと思って、連載を始めました。

――オビの文句は「女子高生もOLさんも。」ということですけど、どうして女の子なんですか? プロレスの一般的なイメージは男性同士、それもレスラーのコスチュームです。それに対して、なぜ女子高生なのでしょう?

広く。:この企画を始めたのが2010年、プロレス冬の時代の末期ぐらいで、プロレスに対してネガティブなイメージがある時代でした。一般向けにプロレス技をどう表現するかと考えたとき、裸でパンツ一丁という、いわゆるプロレスのアイコンがあると、逆に邪魔になることに気づきました。プロレスに対して興味がない人や、ネガティブイメージを持っている人は、プロレスらしい姿を見た瞬間に、「あ、プロレスだ」とシャットアウトしてしまうんです。そこで、技からプロレス的なアイコンをすべて排除しつつ、技そのものの面白さを表現できる方法はないかと考えました。女子高生なら、屈強な大人の真逆なイメージで、普通の人でも親しみがあります。日常生活でありふれている人たちが非日常のプロレス技をやっているというギャップで、プロレス技の面白さが引き立つのではと思いました。ちなみに、アクセントで一人だけ男子を入れています(笑)

――発売時の周りの反応はどうでしたか?

広く。:とにかく面白がられて、編集さんが書店に営業に行くときにもまず説明に困るわけです(笑) 「女子中学生がプロレス技をかける本なんですけど……」「……それはサブカルですか?」って(笑)イラスト集ではあるけど、スポーツコーナーっぽいし……。それでも面白がってくれる書店員さんがたくさんいて、「なんか分からないけど、面白そうだからいっぱい入れるわ」みたいに応援してくれる人がたくさん出てきました。

――書店員に対するニッチな切り口で、「何だこれは?」と思わせたのがヒットの理由かもしれません。

広く。:真正面からプロレスにすると、ファンは喜ぶけど、その外に届きません。あえて、表紙を含めてプロレスっぽさを極力排除して作っています。結構プロレスってにぎやかなものになるので、その反対を行きました。プロレス技からプロレスっぽさを全部なくすと、逆にプロレスの面白さが出るんです

――棚橋選手がやっているハイフライフローも、フライングボディプレスなのに選手によって技名が違う。この本を技名の業界標準にしてみてはどうかなと思うんですが(笑)

広く。:団体さんにも技のチェックをお願いしているんですけど、よくわからないと言われることが結構あって(笑)。技名に「・」が入るのかどうかとか聞いてみたら、明確に定まっていなかったり。

――技名もあいまいだし、選手名もあいまいですよね。外国人選手の表記が媒体によって異なったり、こだわりもあります。技名も「ブレーンバスター」と「脳天砕き」、日本語名と英語名で若干違ったり、タッグチームでも『週刊ゴング』のタッグ名と『週刊プロレス』のタッグ名が違ったり……。理由もいろいろなんでしょうが、選手から直接聞いたり、記事上で「変形〇〇」と報道してから、名前を募集したり。ちゃんと言ったものは正式名称がすぐ決まるんですが、そうでないものはわけがわからない。天龍(源一郎)さんの「53歳」とか(笑)

広く。:『プ女子百景 風林火山』でも、「53歳」と、マンモス佐々木さんの「29歳」が出てます。

――カバーの範囲が広いですね! 亡くなられた冬木(弘道)さんは、川田(利明)さんの「ストレッチプラム」を「冬木スペシャル」と言って使いだして。どう違うかと聞かれたら指の角度が違うって(笑) 技名はどんどん増えていきますね。

広く。:同じ技でも違う名前がついていたりします。

――最初作る時は相当大変だったじゃないですか?

広く。:技のチョイスは大変でした。基本的には直観なんですが、なるべく最新のからクラシックまで、メジャーからインディーまで、偏らず縦横無尽に入れておきたいとは思っていました。超マイナーな技と超メジャー技がごっちゃになってるのがいいかなと考えて作っています。

――技はマニアックな方向に走っている気がします(笑) 昔からこだわりが?

広く。:わかりません(笑)

――ドラマ「豆腐プロレス」でも、広く。さんのイラストが使われています。もともとオファーがあったんですか?

広く。:急遽、私の方にイラストを使いたいという連絡が来たんです。松井珠理奈さんがプロレスをやることになって、その研究のためにたまたま手に取ってくださったらしくて、そこからドラマの監督に知れ渡って、「何だこれは」となったらしいです。

――「豆腐プロレス」やってくれたのはすごくよかったです。あれを見ているとニヤリ顔がとまらない。

広く。:役者さんの皆さんが本気で取り組んでくださっている。珠理奈さんもすごく練習しています。

――珠理奈さんも魅力ですが、個人的な一押しはユンボ島田(笑)

広く。:いいですね、姿勢が一人違います(笑)

――やり切っているというか、アイドルを捨てている感が(笑)

広く。:まさにはまり役です(笑)

©WIP2017製作委員会 ©AKS

 

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山口 義徳(プロレスTODAY総監督)
『プロレスTODAY』総監督。
その素顔は運営会社(株)リアルクロス代表取締役社長。
プロレスTODAYの企画・進行・管理を行い、会場ではカメラマンも兼務。
またプロレスとビジネスの融合を行い、会場でのクライアントとのタイアップも実施。

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