講談師 神田伯山が新旧「グレーゾーン」を公開!プロレスファンが八百長疑惑に立ち向かう新作講談
読者諸氏は昔「プロレスって八百長だろう?」と議論をふっかけられたことはあるだろうか?そんなかつてプロレスファンの永遠の課題と言えた“八百長論議”に鋭く切り込んだ講談がある。
講談とは戦国時代に始まり江戸時代に隆盛を極めた伝統芸能で落語と並ぶ寄席演芸である。落語が人のおかしさを話し笑わせるのに対して講談は軍記物等に代表されるような人の勇ましい姿や立派さを張り扇片手に語る。よく忠臣蔵の討ち入り47士に残ったメンバーを語るのが講談で、300人いた隊士のうち200数十名の逃げてしまった隊士を笑うのが落語と評される。
そんな講談のスーパースターといえば神田松之丞である。まだ一人前とはみなされない二ツ目から頭角を現し、数百名の会場を満員に埋め、自身のラジオ番組もスタート。遂に大名跡の「神田伯山」の名前を六代目として襲名し情熱大陸にも出演。今年2020年に満を持して真打に昇進した将来の人間国宝と呼ばれる人物である。
そんな神田伯山は根っからのプロレスファンである。週刊プレイボーイの対談ではアントニオ猪木と対談。大日本プロレスのスポンサーも務める。
そのプロレスをテーマにした新作講談「グレーゾーン」を神田伯山が自身のYouTubeチャンネル「神田伯山TV」で公開した!
(講談の世界では語り継がれる話を読み聞かせるのが一般的。自分で話を作る場合は落語と同様に“新作”と呼ばれる)
▼【講談】「グレーゾーン」in 新宿末廣亭(2020年2月17日口演)【真打披露目ver.】
この新作講談には話の初めの“まくら”からアントニオ猪木話が登場。話の始まりには力道山が登場するなど若くからプロレスファンで現在も大日本プロレスのリング鉄柱に自身のラジオ番組の宣伝を出すなど、団体スポンサーとしても知られる神田伯山ならではのプロレス談議が炸裂する。
他にもアブドーラ・ザ・ブッチャーやルー・テーズ等の話もでてくる。更には相撲の千代の富士や大乃国にまで話が至る。
神田伯山辞典【グレーゾーン】松之丞時代、元横綱千代の富士の九重親方が亡くなった際に封印され、幻の新作と呼ばれDVDでしか観ることの出来なかった作品であったが、後に真打昇進披露興行で鯉八さんが出演した日に高座に掛けられ、後に伯山TVにて公開された。相撲プロレス笑点を講談に取り入れた名作 pic.twitter.com/gwvaVcodyU
— 松之丞ファンクラブ(非公認) (@YSRWqvjxJ4MhAXk) April 22, 2020
<グレーゾーンのあらすじ>
⇒神田伯山の盟友落語家「瀧川鯉八」を主人公にした新作講談。「プロレスは八百長だろ?」と言う人と戦う中学生のプロレスファン2人が理論武装をしながら八百長攻撃をしてくる輩を論破していく。そんな日々を過ごす中、あのミスター高橋本が出版されてしまう…果たして2人はどうなってしまうのか?
個人的には前半部分がダイジェストになっている2020年版よりも詳細を語って聞かせる2011年版のグレーゾーンの方がわかりやすく面白い。(※ただし映像が綺麗で観客が多いのは2020年版なのである)
▼【講談】「グレーゾーン」in トナカイ小麦店(2011年1月30日口演)【前座初演ver.】
コチラの話を是非聞いてほしい。講談好きなプロレスファンの間では「伝説の一席」と呼ばれているのがこの「グレーゾーン」である。2011年版には真壁刀義も武藤敬司も導入から登場する。長州力とスタン・ハンセンのラリアットの違いにも言及していて非常に聞いていて面白い。またプロレス八百長論について論破する様もこちらの2011年の方が丁寧に語られていて自分を投影する読者も多いはずだ。
プロレスの試合を生で目にすることができないこんな時だからこそ講談でプロレスを楽しむのも一興ではないだろうか…