【大怪獣モノ】特撮で輝く、プロレスラーの生身の肉体

プロレスラー・飯伏幸太の新たな姿が、映画『大怪獣モノ』にあふれていた。

突如現れ、人間生活を乱す大怪獣「モノ」を、追い払った英雄がいた。ある若者が、怪しげな万能細胞セタップXを注入されて巨大化し、怪獣と戦い、地底へと追いやることに成功したのだ。
この若者、「超理化学研究所」の草食系研究員・新田陽出人(ひでと)を演じるのが、飯伏さんだ。

陽出人はあっという間に英雄になる。お酒が飲めないことで有名な飯伏さんが、キャバクラでおだてられ、カクテルを一気飲みして、陽気に叫ぶ。誘われたホテルでシャワーを浴びると、筋肉を水が伝ってゆき、カメラがそれをなめ回すように追いかける。演技の名のもとに、プロレスファンが知らない、飯伏幸太の姿が解放されている。

映画の世界は、同時に演技の世界でもある。しかし、演技の方が日常より生き生きしているように見えるのはなぜだろう。もしかしたらこの映像は、演技ではなくて素なのかもしれない。

特撮映画の主演がプロレスラーというのは意外かもしれないが、そもそも特撮とプロレスは近しい関係にある。特撮のベースがプロレスである、ともいえるかもしれない。技のかけ方はプロレスベースで、大切な必殺技は最後まで取っておくもの。プロレスラーが直接参加している作品も数多くある。『大怪獣モノ』も、その中のひとつだ。
本作が突き抜けたところは、遺伝子強化されたとはいえ、生身の肉体で怪獣と戦う、という点にある。プロレスラーの肉体は、見事にその期待に応えている。

肉体は見えている通りにそのまま動いている。だからこそよくわかるのだが、大怪獣「モノ」との戦いは、特撮であり、まぎれもなくプロレスでもある。繰り出す投げ技も、蹴りも、もちろんフェニックス・スプラッシュも、プロレス。フィクションとして立ち現れる怪獣を、CGではなくスーツアクターとして相手にすることにより、よりいっそう、実在するレスラーの肉体が躍動し、輝いているようにさえ見える。
プロレスラーは肉体を扱うプロだ。プロは、同じくプロである映画スタッフに磨かれることで、さらに輝く。

一躍ヒーローとなった新田陽出人を美貌で誘惑する女スパイ・リサを演じるのは、DDTプロレスリング所属の赤井沙希さん。強さと美しさを備えた肉体を、映像が鮮明に切り取ってゆく。肉体の力に立ち向かうのは、やはり肉体なのかもしれない。

さらに、飯伏幸太の肉体を手に入れた新田陽出人は、物語の中でまた一つ、新たな肉体を手にすることとなる。
世界一性格の悪い男、鈴木みのるだ。

より強くなって再び現れたモノに対し、彼は誰よりも容赦なく戦い、怪獣を痛めつけてゆく。決め技はもちろん、ゴッチ式パイルドライバー。「新田陽出人」という役名にもかかわらず、もはや別人のような動きを見せている(実際に別人なのだが)。

映像の中で、鈴木みのるは、どこまでも鈴木みのるに見えた。「新田陽出人C」という役を、演じる肉体が喰らってしまったかのようだ。あまりにもはまりすぎていて、役を演じているかどうかすら、もはやわからない。
同時にその時、飯伏幸太が、普段は見せない姿を晒しながら、「新田陽出人B」という役を、確かに演じていたことに気づかされる。

プロレスラーが俳優として映画の現場に立つ中で、プロレスラーとしての個性と各々の演じる役が、映像の中でぶつかりあう。プロレスファンなら、このような見方を楽しむことができるるだろう。


【商品情報】 『大怪獣モノ』
発売日:2017年3月22日(水) ※レンタルDVD同時リリース
発売・販売元:キングレコード 【Blu-ray】¥4,800+税(KIXF-444) 【DVD】¥3,800+税(KIBF-1455)
映像特典(BD・DVD共通):劇場予告編、特報、メイキング、舞台挨拶映像(完成披露試写会、初日舞台挨拶①②)、スペイン・サンセバスチャン映画祭映像 ※70分
【スタッフ】監督・脚本・特撮監督:河崎実/脚本:中野貴雄
【キャスト】飯伏幸太、斉藤秀翼、河西美希、赤井沙希、鈴木みのる、堀田眞三、きくち英一、古谷敏、
真夏竜 毒蝮三太夫
2016年/日本/93分/ © 2016『大怪獣モノ』製作委員会 公式HP: http://mono-movie.com/

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