【今成夢人インタビュー】<前編> 挫折しても腐らなければ「見つけてくれる人」に出会える。それが竹下幸之介、飯伏幸太さん、大谷晋二郎さんだった。
挫折しても「俺は駄目じゃないんだ」と思い込む
――今成さんのプロフィールを辿ると挫折の連続ですね。新卒で入社したテレビ局で営業部に配属されて8か月間で退社。新社会人の最初の壁がこの「配属先」ですね。
「営業部はキツいな、やりたいことが出来ないんだなっていう思いが上回りましたし、上回った人は辞めればいいと思いますけど。冷静に振り返れば、せっかくだから『ニッポンのサラリーマン』をもう少し経験してみても良かったなと思います。それがどこかで役に立つのかもしれないし。実際、自分も8か月間やりたいことが出来ず苦しかった、という感情が全部プロレスに生きてるので。ガンバレ☆プロレスの初期の僕って『テレビ局を辞めたキャラ』だったと思うんですよ。やりたいことをやれなかったキャラ、みたいな。僕自身は『売り物にする』って明確な客観性はなかったんですけど、今振り返るとちゃんとそれを自分の物語にしようとしてたから」
――その時点でも客観性はなかったんですか?
「ないですね、本当にないです。僕は基本、客観性はなくて、主観、主観なので。自分のプロデュース興行も『全体がこういう構造だからこれをやったらウケる』とかじゃなくて『ただ俺がやりたかったからやる』なんですよね。ぽっちゃり女子プロレスも、細身の女子プロレスラーが増えてきたことに自分なりに思うことがあり、ぽっちゃり体型の人が好みだった自分の思いに火をつけただけで。基本的には逆を狙うとかの発想もないです。『ただやりたかっただけ』なんですよ」
――確かにクリエイティブで「やりたかったからやる」ほど強いものはないですね。
「そうかもしれないですね」
――マーケティングで「これはウケそう」で作っていくとすぐ見抜かれますよね。私はプロレスの本を作ってきて「どういうことをファンは知りたいか?」は常に考えていますけど、根本は「俺が一番知りたい」なんですよ。
「個人のエネルギーと衝動をどれだけ信じれるか。いい意味でガっと行けるか。変にバランスを取ろうとすると中途半端に終わってしまうこともありますからね。あと『俺はダメじゃないんだ』と思い込むことも必要かなという気がします。僕も人から『どうせお前なんか』という視線をひしひしと感じてたんですけど、僕は可能性があると思い込むことが大事だと思うし。自分が自分にベット出来る時はした方がいい、と僕は思うんですよね。どっかで絶対、年を取ったら自分にベット出来なくなる時が来る。肉体が朽ちるとか、病気してしまうとかもあるし。そうなった時には自分より若い人に託すとかはあると思うんですけど、僕はまだ自分自身に役目があると思って、託し続けたいので。たとえば、ガンバレ☆プロレスを始めた時は27歳で、再デビューというか事実上の一般的なプロレスラーデビューで遅いといえば遅いです。だけど遅いということを考えてもしょうがなかったし、自分に可能性があると考えられるうちは一般的な年齢は考えず、自分にベットし続けた方がいいなと思います」
▼後編に続く
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