【編集長コラム】「キング・ハク一家がMSGで大暴れ」
新日本プロレス4・6ニューヨークMSG大会の第0試合「1分時間差バトルロイヤル~HONORランボー~」に、タマ・トンガ、タンガ・ロア兄弟の父、キング・ハクが登場。トンガン・デス・グリップ(コブラクロー)を繰り出した。かつてWWF(現WWE)でも大活躍したレジェンドの健在ぶりに会場は大爆発、日本そして世界中のファンも大喜びした。
トンガから来日したキング・ハクは大相撲に入門し、プロレスラーに転身。全日本プロレス、世界マット界で大暴れした。32年前に、カナダにあるキング・ハクの豪邸を訪問したことがある。アメリカ、メキシコなどを取材ツアーで訪れていた最中に、日本語も堪能なキング・ハクと会えて、ホッとした瞬間が、今でも克明に蘇ってくる。
と同時に、全日本プロレスの若手時代、プリンス・トンガとして頑張っていたころ、先輩レスラーたちから妙な日本語を教えられていた姿も思い出した。放送禁止用語、卑猥な言葉などで、しかも「日本では女の子への挨拶だ」として教わっていた。
素直でまじめなプリンス・トンガは真に受け「ファンと仲良くなりたい、溶け込みたい」と、熱心に四文字言葉を連発。それも満面の笑みで連発していた。
当然だが女性ファンの顔は引きつり、ドン引き。「それは言い方が悪いんだ。もっと明るく、もっと笑顔で、もっと大声で」という悪い先輩のアドバイスに忠実に従うプリンス・トンガ。事態は悪化する一方だった。
いつしかトンガ王国の関係者の耳に入り「そんなプリンスはいない。プリンス・トンガと言わないでほしい」と非公式に団体サイドにクレームが届いた結果「キング・ハクに改名を余儀なくされた」という都市伝説まで残っている。
二人の息子は4・6MSG大会ではIWGPタッグ王者コンビとして「IWGPタッグ&ROH世界タッグ選手権 4WAYマッチ」に出陣し、見事に勝利。タッグ2冠王に輝いた。親子そろってMSGで大爆発。キング・ハク一家の名前が改めて世界中に轟いた。
32年前のハク邸訪問時、3、4歳だったタンガ・ロアがいた。以前、彼にカナダでの思い出話をしたところ、当然ながら覚えていなかった。とはいえ「あの小さかった子が・・・」と、月日の流れを実感したものだ。
タマ・トンガ、タンガ・ロア兄弟は、ちゃんと日本語を教わっているのだろうか。悪い日本語ばかり、覚えてしまっていないだろうか。父キング・ハクと同年齢の者として、ちょっとばかり心配している。
(写真・伊藤ミチタカ氏)