【スターダム原田克彦社長インタビュー】団体経営、今後のビッグマッチ、国内戦略&海外戦略、新日本とスターダムの違いを語る

③2023年の国内戦略、海外戦略

――2023年、すでに4か月が過ぎ去ろうとしていますが、今年の国内外の戦略についてお伺いできますでしょうか。

国内はやはり引き続き地方での大会を進めていきたいと思いますね。昨年末に大型バスを購入したので巡業活動も行いやすい体制ができましたし。日本国内で行ってない県はあと数県なんですけど、来年度中には全部行きたいなと思っていますね。

――全県制覇?

そうですね。そこに深い意味はないかもしれないですけど、達成したいし、まだスターダムを見たことのないお客様に観戦してもらえたら嬉しいですよね。やはり地方で大会を行うたびに動員数が増えているんですよね。だから新日本プロレス並みにとはまだまだ言いませんけど、大きな大会だけではなく、各地での中小規模大会もしっかりと開催することによって国内ファンの方々を増やしていきたいなと思います。

――選手にとっても自分の地元で興行がおこなえるということは嬉しいですね。

今年開催した中野たむ選手の安城市、岩谷麻優選手の山口市での凱旋大会が良いケースになりましたが、その都市の行政の方々とも一緒になって盛り上げていけたらいいかなと思っています。行政からご協力いただけることで地方活性化、地域創生という面でも良い取組ができるのではないかなと思います。全国何か所も巡業してまわる企業、団体は世の中そうもないですよね。例えば簡単なことですが選手達が地元の観光地やグルメなどをSNSで発信することによりちょっとした広報活動のお手伝いができたりすると思います。こちらとしてもスターダムという名前を認知してもらう機会になりますので凱旋大会は引き続き取り組んでいきたいですね。

――そしてコロナ禍が収束してきましたので、これからはより海外にも目を向けられていると思いますが…

ここ3年くらいコロナを始め円安、インフレなどで経済的にも厳しい環境の中、意図的に手掛けなかったところがありました。海外からの選手招聘もあまりしなかったですし。ただそのような事情も落ち着いてきているので、そろそろ動き出してきているところです。グループ団体の新日本プロレスアメリカの『NJPW STRONG』が米ロサンゼルスを拠点にしていますが、その大会にもスターダムの選手を派遣していきたいです。アメリカのプロレスファンの認知が広がれば、来年もしくは次の年くらいに自前での興行が出来たらいいなと。国内を固めつつ近い将来でのグローバル展開は必要だと考えています。

――現在、動画配信サービスの『STARDOM WORLD』でも海外の方の視聴がとても多いと伺いました。

もう今は半分くらいまでになってきているんじゃないですかね。ただ、諸々課題を抱えています。『新日本プロレスワールド』のようにテレビ朝日さんのような放送局が技術運営面を担当しているわけではなく、我々単体でのサービス提供であるため、どうしてもインフラやクオリティが追い付けていない面は否めません。現状『新日本プロレスワールド』と比較されると厳しいなと思うところはありますが、少しずつ補強、整備をしながらサービス拡充を図っていこうと思っています。

――有力な外国人選手が来たときはアクセス数の期待ができますね。そこでサーバダウンしてしまったら、ファン離れにも繋がりかねないですし。

そうですよね。自前で全て揃えるのにはかなりのコストがかかるんですよね。他のサブスクサービスも現在値上げをしているところが多いかと思いますが、『STARDOM WORLD』もなかなかしんどいところがあるので、クオリティを上げたいという思いとでジレンマを抱えてるところはありますね。

――難しいところですね。

動画配信もそうですが、チケットやグッズについても「価格が高い」というようなお声をいただくことがあります。でもそこで得た収益というのは、しっかり選手やスタッフに還元しています。企業活動を回していくための費用や多少の内部留保は確保していますが、本当に必要最低限。これについてはいろいろ揶揄されたりもしますが、これからのスターダムの進化のためにもファンの方々にご理解お願いする必要があると思っています。

――日本は値下げ競争が一時期激しかったから、その名残みたいなものはありますね。

日本はここ30年深刻なデフレが体に染みついちゃってると思うんですよね。昨今のコストプッシュインフレによるサービスの値上げ圧力に対してこれだけ抵抗感が強いのも日本特有だと思いますし。本質的には社会全体の問題だと思っているので、もっとうまく経済が回り良いインフレが体現できるようになればいいんですけどね。

――そうですね。

あと海外展望のことを言えば、アメリカだけでなく東南アジアを中心としたアジア進出を見据えて行くことも必要かなと思っています。現地から選手を発掘したり、育成したりというケースもあるかもしれないですし。政治リスクが高そうな国もなかなかですが、東南アジアのタイやシンガポールとかは検討したいです。日本のアイドルやエンタメ文化を受け入れる素地もあるので、案外男子プロレスよりも女子プロレスのほうが、スムーズに受け入れられるのではないかなと思っています。

 

④マ-ケット市場予測

――今後の女子プロレス界について、もちろん成長曲線を描いてらっしゃるかと思いますがどのように予想されてますでしょうか。

ブシロードファイトとして前期は売上10億ということで発表させていただいて、今期はそれを上回る勢いという感じではあるのですが。業界的には男子プロレスも含め、コロナで落ちた数字が戻り切ってないですよね。先日の新日本の両国(4.8両国大会)は結構観客動員あったみたいですが、全体的にはまだまだ戻ってないですよね。それを考えるとプロレス単独のジャンルとしては結構厳しいのかなと。これ以上伸ばしていくには、やはりプロレス以外、以外というと語弊があるかもしれませんが、プロレス市場という枠だけにとらわれずに、スターダムをどのように発展させていくかによって市場というものを捉えていった方がよいのかなとは思っています。スターダムは多方面からキャリアを重ねてきた選手が多いです。アイドル、舞台女優、アクションスター、教師等々、結構なタレントがそろっています。そのタレント性をリング上で存分にパフォーマンスすることはもちろんですが、エンタメの世界で表現し力を発揮することができると思います。活躍の場は多岐に広がるのかなと。男子に比べてもスターダムはいろいろな側面から見せていけると思っているので、やり方によっては新日本プロレスを追いつき追い越すこともできるんじゃないか…という思いを持って頑張っていますけどね。

――なるほど。昔だとビューティ・ペアや、クラッシュギャルズのようなテレビメディアを席捲するようなこともありました。

でも一過性のブームになってもしょうがないと思ってるんですよね。派手でなくても右肩上がりに成長していきたいと思ってますし、その自ら作ったマーケットをしっかり成熟させていきたいなと思っています。

――男子プロレスと女子プロレスだと全く違うアプローチの仕方が出来るかも知れません。

男子プロレスにはやはり伝統があるので。その伝統に守られている部分もあると思いますけど、女子プロレスはそういうものが少ない分、思い切ったことができるのでいろいろチャレンジしていこうと考えています、リング上だけでなくてね。例えば直近ではご協賛いただいているソフトバンク様の企画をスターダムでコラボ案件として取り組んでいます。選手たちの3Ðアバターがメタバース空間で躍動するという企画なのですが、それも他のプロレス団体のみならずエンタメジャンルでも初めての取り組みのようです。この先どう発展していくかわからないですけど、いろいろチャレンジしていくとそこで興味を示してくれるプロレスファン以外の人もいるでしょうし…。

――そうですね。

そこでスターダムって面白いことやってるよね、じゃあ今度会場に見に行ってみようとか、youtubeや動画配信で見てみようとか、そういうふうに広がってファンが増えてくれればいいなと思っているので。失敗を恐れずにね。

――スターダムは本当にいろんな選手がいらっしゃるので、誰か1人は好きになるんじゃないかなと思います。

魅力的な選手が多いですからね。だからスターダムに来たら、いろいろなタイプの選手がいて、いろいろな戦いが見れるねという感じにしていきたいです。

 

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