【インタビュー】駿河メイ メキシコCMLL「女子版グランプリ」2年連続参戦の裏側

 駿河メイが2023年10月20日~11月8日に渡り、メキシコ・CMLLへ参戦した。その最大のビッグマッチである「第3回グランプリ・デ・アマゾナス(女子版グランプリ)」へ2年連続参加、またメキシコ全土で試合を行なった。昨年も同時期にメキシコ遠征を果たし、2度目となったCMLLツアーの内容を振り返る。


現在、メイは東京都千代田区にある「市ヶ谷チョコレート広場」を拠点に活動中!!

――メイさんは昨年に次いで、今年もCMLLの各大会へ参戦されました。2度目のメキシコ遠征ということで、昨年よりも自然体で挑めましたか。

メイ 心の準備はきちんとして迎えられたなっていう感じでしたね。去年も濃密なスケジュールだったので、今回も「お~、大変な遠征になるぞ」と思い描けたというのはちょっと大きかったかな。なので、事前準備として、前回持って行かなかった日本食を持って行きました(笑)。

現役ルチャドール兼マスク職人であるルシフェルノのマスク工房を見学。今回の遠征では多数のルチャドールとも交流。

――そうですね。CMLLの遠征になると、最大で5日間連続の試合になりますからね(※1)。やっぱり日本食があるとないとでは違いますか。

メイ 前回はコンビニ飯ですますことが多かった中で、向こうのコンビニが食的には心もとないものがあったので、インスタントでも、日本のものを持って行ったほうが助かりましたね。それにコンビニも24時間開いてるわけでもないんです。今回も地方での試合が終わって、ホテルに戻る前にコンビニへ行っても「深夜だから入れないですよ」って言われてたことがあって(※2)。もう、そこしか食料が売ってないから、朝まで耐えるしかないなあってトボトボ帰っていたら、後ろから店員のお母さんが「やっぱり、開けるよー、開けるから来ていいよー」って(笑)。本当、あのお母さんに救われました。

※1 CMLLは曜日ごとに大会が分かれており毎週月曜日=アレナプエブラ、火曜日アレナグアダラハラorアレナメヒコ、金曜日=アレナメヒコ、土曜日=アレナコリセオ、日曜日=アレナメヒコと各地で定期的に開かれている。

※2 メキシコでは治安の問題から夜11時以降、コンビニは閉まることが多い。

アレナメヒコにおけるメイの入場シーン。『グランプリ』は愛国心が強い国民性だけに、メキシコのファンからはブーイングで迎えられた。

――メキシコは盗難予防の意味で、深夜は閉まっているんですよね。さて、今回もメイ選手はグランプリ参戦が一番の目的でしたが、タッグパートナーであるバリアン・アッキ選手が2か月前の「男子版グランプリ」(※3)に参戦されていますよね。そのことは気になってはいましたか。

メイ はい。アッキが(CMLLへの参戦が)初めてだったから心配で、「大丈夫?」って聞いたんですけど、「多国籍軍同士、仲良くなったので大丈夫だよ」って言ってたので安心はしました。

※3 8月にアレナメヒコにて開催。日本からは高橋ヒロムが参加し準優勝、優勝はミスティコが果たした。バリアン・アッキはインド代表として参加。

――実際にアッキ選手の試合映像を見たりはしたんですか。

メイ 見ました見ました。アッキが日本でもやったことのない技をしていたのが驚きでしたね。アッキは遠くにいる選手へトペをすることが得意なんですけど、『グランプリ』では、リング内から対角から鉄柱を超えて飛んで行って、「あ~~、すごい、メキシコで強化されてる」って頼もしかったです。

――アッキ選手も初めてのCMLLだったんですけど、すごく順応している感じでしたね。

メイ Xでもインド人の間でバズっていました。『グランプリ』でインドの国旗を持っている写真にもすごく反響があったり。インドの言葉でのコメントもめちゃめちゃあって。

アレナメヒコでの試合観戦時、ミスティコがメイを見つけ「一緒に写真撮ろう」と自ら駆け寄ってくれた。

――そのアッキ選手参戦から2か月後の10月に、メイさん自身もCMLLへ参戦します。今回は2度目ということでルチャには以前よりも順応できた感じでしょうか。

メイ そうですね、ルチャって日本と全然違うルールがありますけど、去年はそれに対応することが前回の期間では精一杯でした。今回はそれがわかっていたので、そのうえで自分の動きプラスできていたかなって思います。

――今回の日本人メンバーは、メイさんのほかに、坂井澄江選手、真琴選手だったわけですが、お二人とはどんな接点がりましたか。

メイ 真琴さんはこれまで闘ったことはもちろんですけど、さくら(えみ)さんが同じ師匠なので、同門というか弟子の関係っていうことですね。澄江さんも…接点としてはさくらさんからですね(笑)。さくらさんがアメリカにいるときは、澄江さんと同じオーランドという地域に住んでいて、自分がアメリカへ行ったときもお家へ招いていただいてウエルカムパーティーをしてくださったり、買い出しでも、ごはん注文するのでも、生活環境ではなんでも手伝ってくださいました。その時は試合ではお会いすることがなかったので今回が初めてだったんです。

今年の多国籍軍メンバー。一番左がテッサ・ブランチャード、左から四番目はジョニー・ロビー。

――ということは、メキシコで初タッグだったんですね。

メイ はい。澄江さんが自分と組むことをとても楽しみにしてくださってて、お会いした初日にいきなり「メイちゃん、私アレやりたいんだけど」っていきなり連携の話で(笑)。「やりましょう」って、すぐにCMLLのジムで練習して。それが自分と澄江さんの両側から挟んでの619だったんです。

――実際、その連携はやってみて上手くいきましたか。

メイ 自分は619をやったことなかったんですけど、「メイちゃんならできるんじゃない?」って言ってくださって(笑)。何試合かやったんですけど、やっているうちに呼吸もあってきました。

――さて、その日本代表3選手が参戦した今年の『グランプリ』になるわけですが、今回もまた出場各選手のタペストリーがアレナメヒコに1か月間、掲示されましたね(※4)。

メイ はい! またこのメイの15人分はありそうなタペストリーが今年もアレナメヒコに掲げられているのを見て、自信というかパワーになりましたね。で、終わってから日本に持って帰りました(笑)。

※4 グランプリは、男女どちらも大会の1か月前からアレナメヒコに参加選手のタペストリーが飾られるのが恒例。


11・19我闘雲舞新木場大会では日本へ持ち帰ったタペストリーを披露。本当にメイの15人分ありそう!(笑)。

――帰国後、我闘雲舞の新木場大会で飾られていて、余りの大きさに相当、目立ってましたからね。その『グランプリ』、多国籍軍のメンバー編成はいかがでしたか(※5)。

メイ バランスが良かった感じはしましたね。テッサ(・ブランチャード)が世界的にも注目されているほどの大物選手になので、最初はとっつきにくいというか、怖いかもしれないって思っていたんですけど、このチームのムードメーカーでもあるしお姉ちゃん的な存在でした。テッサがトップにいてくれたことが大きかったです。あとアメリカからジョニー・ロビーという選手も来ていたんですけど、自分とは行き別れた姉妹というくらいに仲良くしてくれました。ジョニー自身も野心がある選手なので、一緒に戦ってて頼もしかったですね。みんなのことを全体的に見つつ、一緒に頑張ろうねって言ってくれるような選手で。日本にも来たがっていたし、また会いたいです。

※5 『グランプリ』はメキシコ軍と多国籍軍に分かれ、それぞれ8人によるチーム編成となる。

――そうそうたるメンバーの中で、結果的にメイさんは途中で脱落となったわけですが、大会を振り返っていかがでしたか(※6)。

メイ まずは多国籍軍が初めて優勝できて、それがめちゃめちゃうれしかったですね(※7)。今回こそは!という気持ちが自分の中にもあったので。ただ、個人的は優勝争いのメンバーまで残らなかったことは悔しかったですね。前大会は最後の最後まで残れました(前大会は3位)し、日本人選手が一人でも、最後まで残れたらなという思いはありました。

※6 グランプリはメキシコ版イリミネーションルールが採用され、負け抜け勝ち残りルール。最後まで残った選手が優勝となる。最後に残った2選手が同じチーム同士でも、その際は戦わなければいけない。

※7 過去2大会の優勝はダーク・シルエタ、ダリス。今大会はテッサ・ブランチャードが優勝し、初めて多国籍軍選手が優勝に。

――今回は日本人3選手とも、優勝争いにまでは残ることはできなかったですね。でも、途中、日本人3人でのポーズを決めたりと、見せ場はありましたね。

メイ そう! あのポーズはなんとかギリギリ決まりました!


坂井&真琴とともに、日本人ポーズを決める3人。しかし、メイの足がかなりいっぱいいっぱい。なんとか踏ん張ったものの…。

――そのギリギリというのは?

メイ 上に乗るのが自分の役割だったんですけど、想像以上に自分の足が短すぎて(笑)。下の土台の二人に乗っかろうとしたら、フル開脚になるくらいに頑張らないと乗れなくて(笑)。自分ひとりだけが苦しかったですね。もう「うわああああ~」って感じで(笑)。

――はい、見ていて必死さが伝わってきました(笑)。今回闘ったメンバーのなかで、特に印象的だった選手はいますか?

メイ アンドロメダ(※8)はすごかったですね。すごく彼女と対戦することが多かったんですけど、本当に日本で戦いたいって思いました。もし次行ったときもシングルしたらどうなるんだろうって思ったり。すごく才能のあふれた選手で年齢も若いですし。あと、ジュビア&ハロチータのタッグとは去年に続いて対戦しましたけど、二人は格別に強いなっていうのは感じましたね。いつか、メイ&アッキとジュビア&ハロチータで試合できないかなって思いました。ミックスマッチだから、叶うことないかもしれないんですけど、その試合だけでもなんとか(笑)。


アンドロメダとはメキシコで何度も対戦。背格好や身長、体格、試合スタイルまでもが似ており、ライバルになりそうな予感…。

※8 今年CMLL入りを果たした新生。場外へのトルニージョをはじめとする四次元殺法は一見の価値あり。今後来日が望まれる選手の一人。

――それは絶対的な夢のカードですね~。

メイ めっちゃそれは思いましたね。なんでも夢が一つ叶うとしたら、この試合を実現させたいくらい(笑)。

――その夢でいいんですか(笑)。さて、アレナメヒコという会場は本当に独特の雰囲気があるのですが、今回の『グランプリ』では多少は場慣れしましたか。

メイ これはもう、2回目の特権なのか、セレモニーから冷静に立つことができました(※9)。セレモニーで(国歌演奏や行進曲の)ラッパを吹く人がいるんですけど、「この人も絶対緊張しているはずだから、大丈夫だ大丈夫だ」って自分に言い聞かせてました(笑)。「あの人のほうが緊張しているかもしれない、一人だし」って。でも今回はその人に「ガンバレガンバレ」って楽しむことができました。

『グランプリ』前日にはミリタリー基地にて、参戦選手全員と軍隊の方々による記念撮影。

※9 『グランプリ』は大会前、軍隊を招いてのセレモニーが見せ場の一つ。軍隊による行進曲や国歌の演奏は、メキシコのファンが心を一つに通わせる大切な試合前の儀式でもある。

――CMLLには他にアレナコリセオ、アレナグアダラハラ、アレナプエブラといった会場がありますが、他の会場で印象的な場所はありましたか。

メイ アレナグアダラハラが好きですね。ここには常設の応援団がいるので、勝手にアドレナリンがプラスされて、気持ちも盛り上がりますし、思い切り戦えたなって振り返って思います。でも1年ぶりで試合をしたので、そのことを忘れていて、試合が始まったら「ブパーーン!」って演奏が始まったから「なんだなんだ」って(笑)。


左からロビン、マスカラドラダ、パンテリータ・デル ・リング (マスカラドラダの父)。パンテリー他の自宅を訪問。

――あの応援団は例えるなら、日本のプロ野球のイメージに近いものがありますね。今回はCMLL以外にもメキシコ北部のモンテレーという町にあるインディペンデント団体にも出場しましたが、また違った雰囲気がありましたか。

メイ いやー、濃かったですね(笑)。

まず、大会の開催スタイルも違いますよね。大会が開始時刻に始まらないのは想定内として、試合の合間に子どもたちがリングで遊ぶ時間があったり、お客さんが選手の周りを取り囲むサインや写真タイムが試合後、強制的に始まるのでそれが新鮮だなって。

――試合前も、メイさんがリング上から観客にサインしてて、日本とは違うなーって思いながら見てました。

メイ そもそも試合前にお客さんがリングに近づくこと何て日本ではないですよね(笑)。レフェリーかスタッフさんに話しかけられたのかなって思ったら普通に紙とペンを持ったお客さんで「サインしてくれ」って(笑)。

――そして試合後はとにかく多くの子どもたちに取り囲まれていることが印象的でした。メイさんが子どものヒロインになってましたよ(笑)。

メイ あれはとても感動しましたね(笑)。自分は「勝ったぞー!」って手を挙げてリングを降りたら、自分の胴回りに子どもたちが抱き付きに来てくれて。自分のことは誰も知らないのに、応援してくれるんだって思うと。子どもたちから見れば、自分は身長が小さいし、年齢も近いと思って、自分と年の変わらない子が頑張って試合をしているんだーっと思ってくれているのかな。


ウルティモゲレーロ宅に訪問。ジュビアも交え、自宅前にあるゲレーロの絵が描かれている車の前で撮影。

――たしかにそういう雰囲気はありましたね。

メイ それで会場から帰るときも子どもたちが待っててくれて、みんなに「バイバーイ」ってしてたら、メイジャンプをマネしてお見送りしてくれて。「うー浸透しているー」ってこれもまた感動で(笑)。

――メキシコの子供たちと思わぬ形での触れ合いでしたね。メイさんがメキシコへ行かれた時期は「死者の日」ウイークで、町全体がガイコツメイクだったりコスプレしている人たちであふれかえっていたのですが、その雰囲気はどうでしたか。

メイ 「死者の日」って名前からしたら 怖い感じはするんですけど、実際フタを空けてみれば気分が晴れやかになりました。一度はみなさんにも味わってほしいお祭りですね。本当に異文化体験ができました。結構、海外には回るんですけど、プロレスに集中しすぎて、その土地の文化に参加することがなかったので、これが初めてでした。

――「死者の日」は子供たちが、お菓子をおねだりする風習があって、メイさんも子どもたちに渡すお菓子を買っていましたよね。

メイ はい、本当に子どもたちが「お菓子ちょうだい」って寄ってくるので、そのためのお菓子を買って。自分はキャンディを少し買ったのですが、真琴さんは1キロも買って(笑)。

「煉獄(杏寿郎)さんに全部挙げるんだ」って「鬼滅の刃」の恰好をした子どもを探していました(笑)。


メイはメキシコの子供たちの間にて人気者となる。「死者の日」には子どもたちに囲まれ、お菓子をせがまれる。

――メキシコの方とも交流されていましたが、スペイン語は前回よりもわかるようになりましたか。

メイ 単語をちょっとづつ覚えられるようになったので、「ペラペラペラー」ってしゃべられても、知ってる単語知ってる単語っていうのがちょっとづつは増えてきて、全く知らない言語ではなくなったです。

――前回に比べると、ずいぶん、進歩した感じでしたね。さて、もし次にメキシコへ行くとすればどういったことがしたいですか。

メイ 前回、その質問を聞かれた時は「ピラミッドに行きたい」と言ってそれが叶わなかったので、次こそはピラミッド(笑)。あとは毎回、『グランプリ』や6人タッグとか、人数が多い中での試合をしているので、タッグやシングルもやってみたいなーって思います。今回、タッグを一度だけしたんですけど、やっぱり感覚が違いましたね。少なければなるほどルチャは難しくなるのかもしれないというのを感じたので、そういった経験もしてみたいです。


アトランティスやフェレサ・ゲレーラら大物レジェンド選手たちとも記念撮影。

――はい、それでは次回もし行くことになればシングルやタッグでの活躍にも期待します! 最後に、日本の話題について。2024年1月10日、我闘雲舞の新宿FACE大会で天咲光由選手とのシングルが決まりました。昨年5月、メイさんの5周年記念試合での対戦が流れてから月日が流れましたが、今はどういう心境でしょうか。

メイ ようやく…というよりファンの方に「お待たせしました」という気持ちが強いですね。あとはこの半年間で、天咲ちゃんも、ものすごく変化したなって思いますね。試合の情報とか追ってたら、気持ちや気迫が前面に出るような試合をやられているのがすごくわかりました。…でも自分、天咲ちゃんのことはあまり知らないんですよ。

――たしか、5月の対戦前にも「かわいいということしか知らない」というようなことを言われてましたよね。

メイ あの時、全然知らなったんですよね(笑)。だからいまはXでファンの方に「天咲ちゃんの事を教えてくれー!」って聞いてるんですけど(笑)。最終的には当たるのは自分なので、そこでやっぱり自分にとってはその「かわいい」というアイドル的な存在で落とし込むのか、いちスターダムの選手として落とし込めるようになるのかは対戦してみないことには、わからないなって感じはします。でも、知識が増すことに興味はすごく沸いているので、当日が楽しみです!


坂井澄江がメキシコでのラストマッチということで表彰。控え室にてOKUMURA、サルバドール・ルテロ社長、在メキシコ国日本大使館・真鍋公使とセレモニー後の撮影。

駿河メイのハートを打ち抜く天咲光由

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