【大日本】登坂栄児社長が語る30年目の告白。関本大介退団の真意、“空白の10年”、そして未来へ託す魂

■関本大介の旅立ち。「団体が強くなった」という証明
――その30周年という節目に、非常に寂しいニュースもありました。長年、団体を象徴する存在であった関本大介選手が退団し、フリーとして活動されることになりました。改めて、退団に至った経緯と、社長の現在の心境をお聞かせいただけますか。
登坂:これは僕から見れば、団体に体力がついてきたんだ、と思っています。

――体力がついてきた、ですか。
登坂:はい。昔の我々であれば、選手が辞めると聞けば、まず「なんで辞めるんだ?」という言葉から入っていたと思います。そこから「なぜ?」「どうして?」と問い詰めて、結局、選手が離れてしまったり、その後の関係がうまく構築できなかったりしたことも、過去にはありました。
でも、今は僕らの考え方が変わったというか、団体が強くなった。直近で言えば、関札(皓太)選手や野村(卓矢)選手の退団もそうですが、彼らがやりたいことを、やらせてあげたい、という気持ちがすごく強いんです。
ストレートな言い方をすれば、昔は、新弟子時代から時間とお金をかけて投資して、ようやくこれから回収するというタイミングで辞められると、「団体としてはどうなんだろう」という気持ちが正直ありました。でも今は、関札選手や野村選手のような素晴らしいレスラーを、我々がプロレス界に送り出せているんだ、という、ある種の余裕というか、強みが出てきた。それが現状です。

――関本選手の場合は、また少し意味合いが違う、と。
登坂:ええ、全く一緒かというと、また少し違います。彼は、団体が本当に脆弱だった頃から、まさに苦楽を共にしてきた仲間です。僕以上に、アブドーラ・小林選手や伊東竜二選手なんかは、本当に辞めてほしくなかったと思う。でも、主語を残った選手たちの側に置いて話せば、彼らは寂しいけれども、「これだけ貢献してくれた関本大介だからこそ、次のステップへ気持ちよく送り出したい」という気持ちが強かった。それを見て、団体だけでなく、所属している選手たちも、本当に強くなったんだな、と感じました。

――それでも、地方のファンの方々にとっては、やはり大きな衝撃だったかと思います。
登坂:そうなんです。地方巡業に行くと、僕たちが感じていることと、全国のお客様が感じていることの温度差の大きさを痛感します。顔を見て直接話せば、「これだけ貢献した関本大介だからこそ、僕らは送り出したいんです」と説明することで、皆さんも「そういうことなんだね」と、気持ちが晴れるようなんですけれど。
彼は、自分のレスラー人生25周年と、大日本プロレスの30周年という二つの節目を、この団体で全うしてくれた。そして、次のステップへ進む。退団直前も、怪我をしていたので二日に一回は会って頻繁にコミュニケーションを取っていましたから。だから、昔のプロレスファンの方からすれば、「裏では何かあったんじゃないか」と思われるかもしれないですけど、全くそんなことはなく、お互いが気持ちよく、それぞれの道へ進めている状況です。

■3本の柱、それぞれの現在地と未来像
――では、現在の大日本プロレスを支える3本の柱について伺います。まず、団体の代名詞でもある「デスマッチ」について、今後の期待はいかがでしょうか。
登坂:そうですね。今、これからデスマッチ戦線を担っていく選手たち…キャリアが5年、10年の選手も含めて、彼らの多くは、伊東竜二や葛西純の試合を見て、「デスマッチをやりたい」と思った世代なんです。それまでは、山川(竜司)さんや松永(光弘)さん、本間(朋晃)選手のデスマッチを見て、という選手が多かった。でも今は、リアルタイムではなく、映像などで彼らの戦いを見て衝撃を受けた世代が、中心になってきている。
僕らとしては、そういった過去のレガシーを大事にしつつも、この新しい世代のチャレンジを、しっかりと受け入れられる土壌を作っていきたいと思っています。

©大日本プロレス

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――時代と共に、デスマッチを取り巻く環境も変化しています。
登坂:はい。あってはならないことですが、試合中の事故やアクシデントの可能性は、常につきまといます。それ以上に、社会環境の変化が大きい。例えば、施設の利用規制や、SNSなどでの表現の制約。僕らが現場でやっていた頃は、むしろ世間に受け入れられないような、過激な表現をすることが良しとされ、それがファンに支持されていました。
でも、今のファンは、多分それを望んでいない。社会から弾かれてしまうようなことを、自分たちの代弁としてやってほしいとは思っていないはずです。だから、社会との共存と、その制約の中で、いかに新しいエネルギーを生み出していくか。そこは、新しい世代が考えていくことだと思いますし、そこに期待しています。

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――次に、「ストロングBJ」についてはいかがでしょう。関本選手が去った後、橋本大地選手や神谷英慶選手が中心となっています。
登坂:もともとストロングという部門は、正直、無理をして道場を構え、意地を張っていた我々が、新日本プロレスさんや全日本プロレスさんといった、歴史あるメジャー団体に「負けたくない」という一心で作り上げたものです。デスマッチで話題を作りながらも、その陰で、関本くんを中心に、通常のプロレススタイルでも絶対に負けないんだ、という土台を必死に築いてきた。
その歴史を、今の世代にもちゃんと背負いつつ、これからもメジャー団体に負けない試合、身体を作っていってほしい。その想いは、今も昔も変わりません。橋本大地や神谷英慶といった世代が、今や団体の骨太な戦いを体現してくれていますから、その肉体のぶつかり合いという醍醐味を、これからも見せていってほしいですね。

――そして、佐藤孝亮選手らが中心の「大日本ジュニア」については、どのような期待をお持ちですか?
登坂:はい。橋本和樹選手や、関札皓太選手、そして今、中心にいる佐藤孝亮くん。彼らは、デスマッチとストロングという、確立された二大ブランドがある中で、自分たちの存在価値を示すために、必死にもがいている状況だと思います。
正直に言えば、僕は、彼らがまだその“我城”を崩せていないと思っています。デスマッチとストロング、この二つを脅かすくらいの勢いで、やってほしい。僕がファンだった時代、例えば獣神サンダー・ライガーさんたちが、新日本プロレスの中で「ジュニアはヘビーに負けない、すごいんだ」ということを見せるために、仲間たちと一つの大きなムーブメントを作っていました。
うちの団体の中だけじゃなくてもいい。他団体も含めて、何か大きなムーブメントを作るような、そういう世代としての盛り上がりを、彼らには期待したいですね。















