【新日本】大張高己社長インタビュー<第2弾>コロナ禍を乗り越えて新機軸を打ち出す!『新日SS』アプリ開発、旗揚げ記念日大会を終え“リベンジプロレス”を見据える!

団体設立50周年を迎えた新日本プロレスの大張高己社長ロングインタビュー<第2弾>。

第1弾では、50周年への想い、シンニチイズム開催~クラウドファンディング実施についての裏話などを語ってもらったが、第2弾ではコロナ禍での事業運営の難しさ、新日SSの開発、3・1旗揚げ記念日や今後の展望、そしてスターダムの躍進に迫った。

 

①コロナ禍での事業運営の難しさ

 

 ――コロナ禍での団体としての難しさだったり、経営者としてすごく悩んでいる部分もあると思います。コロナ禍での事業運営の難しさは、どのように考えていらっしゃいますか?

 

大張社長:向かい風と追い風がありますという話は、以前のインタビュー(2020年12月)でしましたよね。追い風になる部分というのはもちろんあって。今は巣ごもり消費という言い方はあまりしないけど、デジタル、それから在宅での消費活動というのは、前回ヒントをお出していましたね、サブスクがありますよと。スマホサイトのプレミアムサービスを始めたんです。そしてグローバル。海外の方がコロナ禍からの復活が早いので、海外の有観客興行というのはコンスタントにもうできていて。数百人単位から上は2,000人ぐらいまでの大会をやっているんです。今度の4月にシカゴでやる大会は、中規模大会ですが、もう2,000枚売り切れかな。ほぼ99%くらい売れているんじゃないですかね。向こうでのイベントの立ち上がりは早い。

 国内は海外と比べると、実際、リアルイベントに行くかどうかの閾値(数値的な境目、境界線となる値を意味する表現)があるとするじゃないですか。この試合を見たい、この大会に行きたい、このライブに行きたいという場合に行くかどうかの閾値が2〜3割上がっていると思うんですよ。このお客様分布はピラミッドになっているわけで。「新日本プロレス好きだよ」「新日本プロレスを欠かさず見に行く」という人がピラミッドになっていて、裾野の方がはるかに広い。だから、閾値が3割上がると、来場者が半分くらいになってしまう。今、会場に行きたいけど、行けない、行かないという人はまだまだたくさんいらっしゃる。その人たちにもちろん、一義的にはリングの中や戦いやカードですね。そういったもので魅力を増して、ドリームマッチ、ドリームカードという言い方を50周年イベントをやる時に、去年に話をしたと思うんですけど。そういったものもそうだし。魅力を上げていくのも然りですけど。それ以外の部分で、プロレスに対する興味を強めてもらう。プロレスラーに対する興味も強めてもらうところから丁寧にやっていかないといけない時代がもう1回来たなと思います。

 ここ半月から1ヶ月くらいやっている私の仕事の中には、10年前にブシロードが新日本を買収してから、直後の東京ドームあたりからの1年分と、直近の1年分のすべての指標を比べるというものがあります。大会がいつどこで、何大会あって、規模がどうで、そこにどれくらい動員ができてきて、そこにかけた費用がいくらで。あとは社員数も。更に費用の構造を見て、販管費、原価はどうかを見ていて。ここがこうなっているんだ、というのを見ていたりするので。話を戻すと、その時にやってきたこと。一個一個、お客さんに伝えていくこと、お客さんになってくれるように認知の種をまくこと。テレビが始まる時間に私がTwitterで「#金8はプロレス を見ましょう、つぶやいてください、全部読みます」とか。そういうことをスタッフも選手も一緒になってやり直していく、ということが今、大事かなと。さっき言ったピラミッドの中で、行こうと思っても行けないという意味で、閾値が上がっているから。更に興味を持ってもらう、もっと好きになってもらう。それをもう一回丁寧にやろうと。満員の時って、その倍くらいの動員力があったとしたら、多少、その力が落ちたり、試合の魅力がなかったとしても、変わらず満員です。でも、今って、キャパの天井を打っていないわけなので。この周りが全部リアルに見えるんです。前回の試合の流れで、今回お客さんあんまり来てくれなかったら、その次はすごく来てくれた。平日のビッグマッチが多いので苦戦は苦戦です。例えば、曜日がよかったら、1月29日の後楽園なんて、あれはキャンセルになってしまいましたけど、1,000枚以上売れていたんですよ。だから曜日がよくて、こうだったら、こう来るんだと。そのへんをちょっと前、コロナ禍より前は満員、満員、満員……。どこまで行っても満員が続くわけだから、勝因分析も敗因分析もないんですよ。その時代の番頭は何を隠そう経営企画部長の私だったわけですけど(笑)

 

――確かにファンクラブ会員さえ買えない時代がありましたからね。

 

大張社長:そうなんです。ファンクラブで買えなくても、やっと空きチケットが出たと言って、次に一般販売で買っていただけるわけですよね。だから、今こそお客様に対して、プロレスを丁寧にお伝えして、その反応を丁寧に拾って、改善すべきことを改善する。使い古された言葉ですがPDCA、それが大事だし、今、コロナ禍だからその成果が手に取るようにわかる、今だからできることかなと思いますね。

――声を出せないところは、プロレスの楽しみ方のなかで、非日常のものを見て、声を出して、ストレスを発散すること。野球もサッカーも同じだと思いますけど、薬が承認されて、市販薬が出回るようになったら、一気にストレスがパワーに変わるんじゃないかなとすごく期待しています。そういった時に楽しみたいというのは、エンターテイメントだと思うんですよね。ですので、ファンの人も今は我慢しているかもしれないですけど、コロナ禍が明けたら一気に爆発して欲しいですね。

 

大張社長:リベンジ消費という言葉がありますよね。「リベンジプロレス」なんじゃないですかね。

 

――今のキーワードはいいですね「リベンジプロレス」。コロナ明けには悪いことをした選手に対してのブーイングが凄くなりそうです。

 

大張社長:逆に溜まった時に、溜まって溜まって、それが成敗される時の気持ちよさもありますね。

 

――確かに水戸黄門的な(笑)。

 

大張社長:ストレスが溜まってる時に。発散できなかった、鬱積したフラストレーションが悪い奴の相手選手に、自分の気持ちが憑依して、ワン・ツー・スリーでたまらないですよ。

 

――確かに。

 

大張社長:色んな人に言われるんです、社長は介入しないのかって。リングはレフェリーが裁くべきものですが、そんなことを私も山ほど言われてもどかしさ、フラストレーションが溜まるわけです。ですけどワン・ツー・スリーで、ざまあ見ろって、悪行三昧の選手に対して、正直私も思うことがありますね。すみません、何の話でしたっけ(笑)。

 

――コロナ禍の難しさです(笑)。

 

大張社長:コロナ禍だからこそ、丁寧に草の根でしっかり作り上げていく。創業間もなくからテレビ朝日さんとパートナーシップを提携していて「ワールドプロレスリング」に加え「新日ちゃんぴおん。」がある。海外のアメリカの放送局、AXS TVももう一回、空白の2年間を終えて放送を再開できたし。テレビ番組は充実している、BS朝日でも金曜の20時に1時間の放送がある。YouTubeのチャンネルも増やしましたね。タイチ選手にゲーム実況をやりたいと言われたときは悩みました。一応、毎回、監視はしてるんだけど、生配信をやることになって。いろんな入り口を増やして、新たなゲームアプリ「新日SS」も大好評だし。そういったもので新日本プロレスを皆に知ってもらう。「僕らが新日本プロレスです、毎回大会が満員になる団体です」ではなくて、「新日本プロレスが皆様のお近くに行くので、ぜひお越しください」という姿勢でまず知ってもらう、気付いてもらう、好きになってもらうのをもう一回丁寧にやるのが、コロナ禍での難しさというか、大事なことかなと思いますね。

 

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――新日SSはどういう経緯で?

 

大張社長:いや、あれは4年前かな。内藤選手、木谷オーナーで会見(2018年2月)やっているんですよ。「新日本プロレスのゲームを作ります」と。木谷オーナーが「ゲーム作ります。パートナー募集します」と言って始まったプロジェクトなんですよ。その出口がこの間の2月。とにかく皆さんダウンロードして、遊んでみてほしいですね。選手たちも忙しい時間を縫って撮影に協力してくれた超大作ですし、これからもどんどん進化していくと思います。

 

――僕もIT経営者の端くれなのですが、IT経営者はプロレスが好きな人多いですよ。有名企業のIT経営者と一緒にプロレス観戦していますが、40代以上の方は金曜8時を見て育っていますから熱いですね。

 

大張社長:「プロレス接待」ができるくらいだと言われていますからね。

 

――そうなんです。プロレスというのは、これらの年代の人たちにとっては、熱く語れる。あの頃は燃えていたという、その年代のIT経営者がすごく多いので。株式会社ドリコム(ゲームの開発を担当)の内藤社長は年齢はちょっと下になりますけど。そういう人たちがプレーヤーとして、新日本プロレスと協力、タッグを組んで、いろいろやっていくのは、僕から見ていてもすごく楽しいなと思いますね。

 

大張社長:プロレスを見ていると、背中を押されるので、わかる気がするんですね。ファンなら全員(猪木さんに)「迷わず行けよ」って言われていますからね(笑)。

 

――日本のベンチャーは失敗してもいいからどんどん行けという、アメリカみたいな風土ではあまりないような気がして。

 

大張社長:ないですよね。

 

――それでも誰かに背中を押してもらいたい時に、自分の好きなものやスポーツの影響力はすごく大きいですよね。

 

大張社長:大きいですね。特に新日本プロレスの社会的な存在意義はそこにあると思います。

 

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