『ケンガンアシュラ』声優・鈴木達央&浪川大輔が語る“格闘アニメ&プロレス”の魅力

Netflixで9月21日から配信されるアニメ『ケンガンアシュラ』Season2。今作の主人公・十鬼蛇王馬役の鈴木達央さんと桐生刹那役の浪川大輔さんにプロレスTODAYがインタビュー。

今年3月26日には、世界最大級のアニメイベント「AnimeJapan 2023」(東京ビッグサイト開催)にて、『ケンガンアシュラ』×『DDTプロレス』のコラボマッチも実現し、プロレスとのつながりも深い今作品。

鈴木さん、浪川さんには作品のみどころや役作りで参考にしたこと、また格闘アニメやプロレスについての想いも聞いてみた。

㊨鈴木達央さん:主人公 十鬼蛇 王馬(ときた おうま)役
㊧浪川大輔さん:桐生 刹那(きりゅう せつな)役


© 2023 サンドロビッチ・ヤバ子,だろめおん,小学館/拳願会2

――お二人は「ケンガンアシュラ」でも素晴らしい声優っぷりを発揮されております。私達はプロレスメディアなのでそういう意味でも「ケンガンアシュラ」は非常に親和性が高いという部分で拝見させていただいてます。

2人:ありがとうございます。

①鈴木さん、浪川さん視点の作品のみどころ、注目してほしいところ

――まずはお2人視点での作品の見どころ、もしくは注目して欲しいところをお聞かせいただけますか?

浪川:「ケンガンアシュラ」は、設定としてなかなか奇抜で殺伐としていて命を賭けるところもありますが、やはり魅力は全てのキャラクターにドラマがあり個性もあって、自分のお気に入りを探せるところです。

桐生刹那にとっては十鬼蛇王馬が好きだという設定はありますが、視聴者の皆さんの好きな視点で見ていただければと思っています。

結構痛々しい描写も多いですが、それがより生っぽく感じられ、まさにプロレスと一緒で受けてなんぼのような「受けの美学」みたいなものがあります。「ケンガンアシュラ」もそれが胸に刺さる作品だと思っていますので・・・ぜひ・・・桐生刹那を応援してください!とはなかなか言いづらいですが(一同爆笑)。

鈴木:見どころというと、Season1が放送されてから約4年が経過していますが、ここまで異種格闘技をしっかり描いた作品、細かく描いている作品は「ケンガンアシュラ」しかまだないと自信を持って言えること。それが見どころの一つじゃないかなと思います。

例えばバトルアニメとして、グラップリングやプロレス技の挙動がどのようにして、この技になるのかまでしっかり描かれている。CGだからこそできるモーションの魅力を最大限に活かしているので、実際の試合のように感じられます。

アニメですが少し人間味も感じられ、手描きだとできない手数もある。そういうところが複雑に絡まりあったフィクションとしても面白さがあります。ワクワクの作り方を新機軸として全世界にアプローチしているところが「ケンガンアシュラ」の見どころの一つかなと思います。

――ありがとうございます。描写のリアリティがすごいなっていうところは本当に思います。特に私達はプロレスメディアなので格闘の実践のリアリティが伝わってくるなって感じます。

浪川:収録のときは完成の絵ではなく、実際にモーションをして下さる方(人間)を当てている時もあるので、そういう意味では本当にリアルです。

鈴木:そうなんです。まだ絵ができていないときは、レスラー役として実際にレスラー経験のある方が技をかけていたり、王馬が技をかけるときにはどういう挙動になっているのかなど、全てリアルな映像で撮っています。Season1はその映像を見せていただきながら、声を当てていました。プロの目で見てもリアルだと感じるのは、おそらくその影響かと思います。

特にプロレス技になると、関林ジュン(キャラクター)を演じている稲田徹さん(声優:プロレスファンでDDTプロレスリングにプロレスラーとしての参戦経験もある)がプロレスに対しての愛情がとても強い方ですので、「顔面の張り手を食らう時はその音ではない」「そういうときはこの音のほうが生っぽい」などアドバイスをいただきます。僕達がリアルとしてまだ追い切れていない部分を補完してくださるので感謝しています。


※AnimeJapan2023 の会場で『ケンガンアシュラ』×『DDT プロレス』コラボマッチ開催︕総勢 14 名の豪華レスラーとともに鈴⽊達央さんがサプライズで登場︕

――案外声優の皆さんの中でもプロレスファンの方が結構多いのかなと(笑)。

鈴木:音響制作のスタッフさんもプロレスファンです。それでこそ理人(りひと:キャラクター)を演じている金子隼人さん(声優)もドハマりして観戦に行っていました。意外とみなさん「ケンガンアシュラ」がきっかけで、ファンになっています(笑)。

――そう言ってもらえるとプロレスメディアとして嬉しいですね。

鈴木:そうなんですよ。アダム・ダッドリー(キャラクター)を演じている堀井茶渡さん(声優)、稲田徹さん、金子隼人さん、音響制作スタッフ、マネージャーさんが集まった際、(声高に)全員!プロレスTシャツなんですよ!そこに、原作者のサンドロビッチ・ヤバ子さんなどもいらっしゃると、「その団体はいいね!」などと話しているので、もうちんぷんかんぷんです(笑)。

――それだけ多くのファンの皆さんに支えられているんですね。

鈴木:この間、収録が終わりご飯を食ベているときに、音響制作のスタッフさんが携帯でプロレスを見ながら、選手が久しぶりに復帰したとおっしゃっていて、「見てください!私の推しが復帰しました」と大興奮していました。長い間お付き合いがありますが、こういう風に興奮した姿を見たことがないというくらいプロレス愛を感じました。

――嬉しいです。


© 2023 サンドロビッチ・ヤバ子,だろめおん,小学館/拳願会2

②今作品において役作りで参考にしたことは?

――今作の役作りで何か参考にされたことってあったりしますか?

鈴木:柔術や古武術とかですね。

浪川:参考にしたというよりは、周りの空気を一生懸命感じるようにしました。

桐生刹那は、なかなか交わらない空気感のキャラクターだと思っていたので、周りが行くぞ!といった雰囲気のときはあまり行かずに少し異質な感じにしたいなと。自分のことになるとすごく盛り上がりますが、その他に関してはあまり深入りせずに、周りはどういう感じなのだろうと思ったり。

Season1を撮っていたときは座長が本当に良い空気を作っていたので、現場がとても熱い感じだったのですが、今自分はここには乗ってはいけないと思っていました。だからといって別に話をしないとかではないですが、僕は十鬼蛇王馬がいれば良い、そこしか見えていませんでした。

――なるほど。鈴木さんはいかがですか?

鈴木:僕は全ての武術や格闘技の息を、とにかく盗むようにしていました。

例えばSeaosn1で、十鬼蛇王馬が関林ジュンに投げられて聞いたこともない音でプロレス技を受けるシーンがあります。実際はどのような音なのか、自分が受けるわけにはいきませんのでとにかく調べました。どのようなことであっても、自分が演技として出せる状態にしなければいけないと、Seoasn1から意識していました。

ですが課題として残ったことは、リアルは分かるようになったがリアリティとして考えてみたときにまだ物足りないというところがありました。Season2はリアルではなく、リアリティをしっかりと添付してあげることを大事にするように、もう一度改めて研究をし直し、関係のないようなところまで手を伸ばしました。抜刀術は気というところで息はどうなるのか、それから繋げたら手刀や目潰し、古武術のような「二虎流」という創作の武術もあったりして、ファンタジックな中に活かせる音が絶対あるはずだと思い知識を広げていきました。薙刀や槍術、棒術、合気道、古武術、柔術、プロレス、ジークンドー、柔道、レスリング。挙げたらきりがありませんが、とにかく組み技をしたり、何かと戦う動画を一通りさらいました。

ちょうど今収録しているところはグラップリングのシーンが多く、抑え込みや寝技に近いものを返し返され、プロレスにもあるエビ反りに押し上げる行動があり、どのように戦うか。プレッシャーを感じたり、逆になった場合のプレッシャーをかけなきゃいけないときにどういう音にしたら良いのかを、レスリングやMMAなどを見ながら学んでいます。「力点が入っているからこうなり、力むところがこの辺りに入るから息としてはストレートに出る」などと研究したりしました。ファンタジックに演じるところとリアルに演じるところ、全てにリアリティを持たせるために触れています。

浪川:そんな声優いないです(笑)。

鈴木:(爆笑)面白いんです。抜刀系や呼吸法として使えるなとか。

「ケンガンアシュラ」のパッケージのときにNOAHの清宮海斗選手と対談させていただいたこともあり、清宮選手のチャンネルを見ていると色々な方々が出演していらっしゃって、最近だと拳王選手はどうしても見たくなります。NOAHチャンネルは、自分の個人的趣味も含めて勉強になるので助かります。異種格闘が混じっていたり、合気道の白川竜次先生などが出てくると面白いケミストリーがあります。

技をかけているときはどのような息が合うのかを知りたいので、異種格闘を見ていると「こういう違いになるのか」ということを学べ、リアリティに変換した場合は「少し知らない痛さを増幅したほうがいいのかな」と変えることが出来るのですごい教材です。

――声優さんのそのプロフェッショナルな視点っていうのはすごいなって本当に思いましたね。

鈴木:レスラーさんの「受けの美学」と一緒だと思います。実際にトレーニングを積んでいるから大丈夫という安心感があるじゃないですか。

一般の方には顔面蹴りや延髄切りなどをしてはいけないところだけど、レスラーさんはプロの所業なので大丈夫。そのような全く同じことを、声でやらせていただいている感じです。

――やっぱり声優さんはすごいですね。僕らからは考えられないような視点を持ってらっしゃる。

鈴木:達人を見ていると、なぜそこを頑張るのだろう?と思うところが、実はそこが大事だと言われて納得するところもあるので、それに近いのかなと最近思うようになりました。

それこそ(浪川)大輔さんもそうですが敬愛する先輩方は、感覚だけで研ぎ澄ましていて、とてもすごいと感じます。声優の業界は、理論があまりなく、説明できない方々がとても多いです。

理論なんて一つもないんです!これやったらすごい、あれやったらすごいみたいことがない状態でみんなさん声のお仕事をしています。勝手に自分の個を伸ばして出る杭になっている。トゲトゲのままで、その伸ばし方は「知らない」と言いますね。全て口伝なんです(笑)。

⇒次ページ(鈴木さん、浪川さんにとって『最強』とは?、格闘アニメの声優あるある

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