花穂ノ利「怖いもの知らず」で入門、3年のブランクを経てシードリング新風景の中心へ!

 さいわい、体調は戻った。後日、穂ノ利は南月に連絡を取り、会いにいった。そこで勇気を振り絞り、現役復帰したい旨を告白した。

「南月さんに『やりたいです』と言いました。南月さんは、『まさか戻ってくるとは思わなかったけど、また一緒に頑張ろう』って」

 そして再び、穂ノ利はシードリングの道場へ。ブランクがあったが、出戻りの彼女にとってあらためての練習はどうだったのだろうか?

「ドロップキックできないと思ってたんですけど、準備体操から意外と身体は忘れてないんだなって。しかも、練習の段階からあの頃のことが蘇って、負けたくない気持ちが出てきちゃったんですね。それでスクワットとか(まわりと同じペースで)やってたら3日間くらい足がつってしまって(苦笑)。身体はおぼえているんですけど、おぼえていない身体もあったんですね(笑)」


写真提供:SEAdLINNNG

 そして、松本浩代を相手に24年12・27後楽園でカムバック。こちらもまた厳しい試合だったものの、彼女は再び花穂ノ利としてシードリングで闘っていく決意を固めたのだ。

「試合中、泣いてしまうんじゃないかと思ったんですけど、大丈夫でした。(以前所属していた頃とは)気持ちがガラッと変わっていて、プロレスがすごく楽しいと感じたのと同時に、浩代さんをいつか超えたいと思いました」

 カムバックを果たした穂ノ利。では、以前と現在でシードリングに何か変化を感じたのだろうか。

「人は替わりましたけど、準備の段階から“魂の女子プロレス”という部分はブレてないと感じました。そのなかで、一番の変化は若手ですよね。こんなに増えててビックリです。若い子が入ってくる団体になったという意味では、変わったんだと思います。実際、雰囲気が明るくなったというか、空気が変わった感じはします」


写真提供:SEAdLINNNG

 昨年、ウナギ・サヤカとの出逢いが穂ノ利の成長に一役買った。3・20川崎でシングルマッチ。当初は、ウナギ自主興行での「ぱぱぱ令和パーティー」入りをめぐる試合だったが、ここで穂ノ利は初めての感情を味わったという。

「ぱぱぱ合格をめざしての試合だったんですけど、途中からそのことはアタマから離れて、それまで何もなかったウナギさんとの絆が生まれたと思ったんですね」

 試合後、ウナギのコメントに乗る形で、穂ノ利は女子プロレス界で多くの話題を振りまく“時の人” とタッグを組む流れになった。その結実が年末の12・27後楽園。穂ノ利はメインで紫雷美央&夏すみれ組を破りビヨンド・ザ・シータッグ王座を獲得し、初戴冠。しかも、後楽園のメインを自力勝利で締めたのである。所属選手がシードリングのベルトを巻くのは2年ぶりだ。


写真提供:SEAdLINNNG

 また、偶然とは思えないような事実もある。穂ノ利は19年12月にデビューし、20年12月に自力初勝利。24年12月にカムバックし、25年12月に初めてのベルトを手に入れた。主要な出来事はすべて12月に起こっているのだ。

「そうですね! まったく意識していなかったです。確かに、言われてみれば12月っていつも以上にすごく緊張するんですよ。12月になると何か自分で起こしてますね。そうなると、今年の12月が楽しみになってきます(笑)」


写真提供:SEAdLINNNG

 シングル&タッグのシードリング2冠王になるのが今年の目標。獲得したばかりのタッグ王座をウナギとキープしつつ、現在、松本が保持するシングル王座を狙っていくつもりだ。

 が、王者として臨んだ今年の開幕戦(1・13新木場)では「最強トーナメント」出場者を決める若手同士のトーナメント決勝で光芽に敗れ、黒星スタート(タッグパートナーのウナギもVENYにフォールされてタッグ王者組にはまさかのスタートとなってしまった)。

とはいえ、光芽vs穂ノ利の一騎打ちは、今後のシードリングのさらなる充実を予感させる勝負にもなっていた。というのも、試合は途中からいまどき珍しい超接近戦になったのだ。それは本来の道場マッチが意味する道場マッチのような極め合いで、いわゆる“映えのしない”闘いだった。どちらも至近距離から相手の両肩をマットにつけようとし、関節をとりにいく。この距離感から、お互いの負けてたまるかという気持ちが伝わってきたのだ。これはまた、南月と中島が考える女子プロレスのあり方、シードリングの道場論を伝える役目を果たしていたように思う。“魂の女子プロレス”を不器用ながら体現した光芽vs穂ノ利。若手が増えるシードリング、今後に期待が持てる団体だ。

インタビュアー:新井宏

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