【ジャイアント馬場】伝記絵本『うえをむいてあるこう』伊豆修善寺トークショーにスタン・ハンセンさんが初めて家族で登壇

第二部は、ユミ夫人、長男シェイバーさんも登場。初めての家族で登壇となった。

ジャイアント馬場妻元子の姪である株式会社H.J.T.Productionの緒方理咲子さんが、ハンセンファミリーのワークライフバランス、子育て論について話をうかがった。

①ユミさんと結婚、そして新しい生活へ

緒方:まずは、おふたりの馴れ初めを聞かせてください。

ユミ:少し恥ずかしいですね(笑)。元々私の友達が主人のファンで、サインをもらいに行きたいって言われて、私は英語が少し喋れたので、じゃあ一緒に行ってあげようか?と試合を観にいったのがきっかけです。まだ私は予備校生で、18歳でした。出会ってみると、温かそうな人だなと思いました。分厚い眼鏡をかけて、服装もあまり気にしない。そんな素朴な人に見えました。今年の11月で結婚して39年です。

緒方:では、今度はハンセンさん、初めてユミさんをご覧になったとき、どんな印象でした?

ハンセン:世界一素敵な笑顔でしたね(笑)

緒方:ユミさん18歳でハンセンさんに出会われて、39年前のまだまだ保守的な日本で、ましてやプロレスのスーパースターであるスタン・ハンセンさんと結婚ということに、かなり決意が必要だったんじゃありませんか?

ユミ:主人がしつこく(笑)「結婚しよう」と言ってくれたんです。でも、私はひとりっ子で、父を早く亡くしていて、母をひとり置いて、アメリカに行くということについてはすごく悩みました。それでも最後には、私が幸せであることが母の幸せにもなるだろうと考え、主人についていきました。

緒方:ではハンセンさん、ユミさんが覚悟を決めて、ご自分のもとに来てくださったとき、ハンセンさんはどんな気持ちだったんですか?

ハンセン:とにかく一生面倒見る、それだけは保証する。だから新たな人生をスタートするためにアメリカに来てくれと言いました。それだけでなく一筆書きました(笑)

緒方:今は、離婚率も高くなってきていて、なかなか40年も一緒に人生をともに歩むことが難しくなってきています。その中で、国際結婚で、ハンセンさんは日本への遠征も多く、ユミさんは、アメリカで子育てをしながらずっとハンセンさんを待ち続けるのは並大抵な努力ではなかったと思います。

ユミ:人生は、常にバラ色とは限りませんからね。もちろん、主人とずっと一緒にいたいという思いはありました。主人は前妻との間にも子どもがふたりいて、主人の母も体調があまりよくなくて一緒に暮らしていました。だから結婚初日から大家族です。でも家族みんなが私をサポートしてくれたこともあり、大変でしたけど、がんばらなきゃ!と思っていました。

緒方:ユミさんのためにハンセンさんが決めていたことはありますか?

ハンセン:やっぱりお互いに対するリスペクトっていうのが非常に大事ですね。何かつらい時期があっても夫婦で乗り越えなきゃいけないわけですからね。だから世界一の夫になることを目指して一生懸命やっただけですよ(笑)。

 

②シェーバーさんから見た両親

緒方:すばらしい。シェーバーさんは、そんなご両親をどんなふうに思っていましたか?

シェーバー:今振り返ってもすばらしい両親だと思います。父はよく仕事で日本に行っていました。父は家に帰ったときはプロレスラーではなく、本当に父親だったんですよね。切り替えができてたんです。もう自分の父親がプロレスラーだということを忘れるぐらい。もちろん母親がきちんと家を守ってくれたことに感謝しています。

緒方:初めて自分の父親の仕事がプロレスラーだって知ったとき、どう思った?

シェーバー:物心がついたときから父はレスラーでした。アメリカでは意識することはなかったですね。その後、家族で日本に来て2年間暮らしますが、日本ではこんなに有名だったのか!とびっくりしました。家から一歩外に出ればスーパースターなんです。仕事がアイデンティティになっている人も多いですよね。家に帰ってもそれが抜けないわけです。でも父は、本当にきっちり切り替えて、家では父親に徹底していました。今自分は36歳で、4人の子どもがいますが、その父の姿がとても参考になっています。

緒方:シェーバーさんの言葉を聞いて、ハンセンさんはいかがですか?

ハンセン:誇らしい気持ちになります。ユミがまっすぐな人なので、シェーバーがまっすぐ育ったことがうれしいです。人生にはいろいろつらいことがあって、大変なこともあります。子供を育てるのは、非常に難しいし、大変なことなんですよ。家庭を維持するためには、仕事のことも考えなきゃいけないし、お金のやりくりもしなきゃいけない。ただ一番大事なのは子供たちを立派な人間に育てるってことだと思います。

緒方:ユミさんはいかがですか?

ユミ:シェーバーも今はお父さんですけども、私にとってはいつまでも息子です。いい青年に育ってくれたなということで本当に感激してます。それはただ私や主人だけの力ではなく、いろんな方のおかげです。私達がクリスチャンだったことも大きいです。シェーバーも子どもたちに愛を信じる力を伝えて欲しいなと思います。

緒方:シェーバさん、ハンセンさんからの言葉で印象に残っているものはありましたか?

シェーバー:私は以前野球選手でした。当然うまくいかないこともありますよね。当時はSNSもないし、モチベーションを高めてくれる映像もありません。そんなとき、父は私のモチベーションを高めるのがうまいんですよね。だから父から言葉をもらって、苦しいことを乗り越えてきました。「壁に当たっても、全力でぶつかって、ぶち破れ」ということはよく言われました。ただ1つ父の言葉で「カーブを投げられたら絶対にバットを振るな!」というのは納得できなくて、言うことを聞いていませんでした(笑)

緒方:シェーバーさん、ユミさんからの生き方で影響を受けた部分はありますか?

シェーバー:私も父親になって初めて気づいたんですが、父は長い間、日本で巡業に出ていますよね。そうすると母はひとりで子供たちの世話や家庭のことをしなきゃいけない。それはすごく大変ですよね。子供のときはそんな苦労に気がつかなかったですが、いざ自分が父親になって、初めてその苦労がわかりました。今、こうして私が日本に来ている間にも、妻が家庭を守り、子供たちの面倒見てるわけなんですよ。アメリカと日本の文化の違いもあるわけですから、母も大変だったと思います。今は本当に感謝の気持ちでいっぱいです。お母さん、ありがとう。

➡次ページ(子育てする上で大切にしているもの・日本のファンへ、そして馬場さんへ)へ続く

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